判旨
裁判所は、判決の理由において、証拠を採用しない場合にその理由を逐一説明する必要はない。また、原審が適法に行った事実認定や、証拠の評価に基づく知情性の否定は、上告理由とならない。
問題の所在(論点)
裁判所は、証拠を採用しない場合にその理由を説明する義務があるか。また、原審の認定した事実や知情性の有無を上告審で争うことができるか。
規範
裁判所は、証拠を採用しない場合にその理由を逐一説明しなければならない義務を負わない。また、原審の適法な事実認定は、特段の事情がない限り、上告審を拘束する。
重要事実
上告人らが、不法行為の事実や相手方の知情性(悪意)を主張したが、原審は証拠の全文を検討した結果、不法行為の事実を認めず、被告が事情を知っていたことも認め難いと認定した。上告人らは、特定の証拠を採用しなかったことや、事実認定の誤りを不服として上告した。
あてはめ
原審が証拠の全文を通読した上で不法行為の事実を認めなかったことは適法な事実認定である。裁判所は採用しない証拠について、一々その理由を説明する必要はないため、理由不備等の違法はない。また、被告が事情を知っていたことを否定した原審の認定は、事実認定の専権に属する事柄であり、これを非難することは上告理由にならない。
結論
本件各上告を棄却する。証拠の不採用理由の説明は不要であり、事実認定の非難は適法な上告理由に当たらない。
実務上の射程
民事訴訟における理由付記義務(民訴法253条1項2号)の範囲を画する判例であり、証拠排除の判断に特段の理由説明を要しないことを示す。実務上、自由心証主義に基づく事実認定のプロセスについて、判決書における簡潔な記載を許容する根拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)479 / 裁判年月日: 昭和35年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が当事者の提出した証拠では損害額を確定できないと判断した場合において、特段の事情がない限り、自ら釈明権を行使して立証を促したり職権で証拠調べを行う義務はない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、相手方の行為により得べかりし利益を喪失したとして損害賠償を請求した。原審は、上告人が提出・援用し…