判旨
当事者が明らかに争っている事実を、裁判所が証拠に基づかず擬制自白が成立したものとして認定することは、事実認定の法則に反し違法である。
問題の所在(論点)
当事者が事実を争っていることが記録上明らかであるにもかかわらず、裁判所が擬制自白(民訴法159条1項相当)の成立を認めて無証拠で事実認定を行うことの是非。
規範
民事訴訟法における自白(または擬制自白)は、当事者が相手方の主張した事実を争わない場合に成立する。しかし、記録上明らかに争っていることが認められる事実については、証拠に基づかずに事実認定を行うことは許されず、証拠によらずに事実を認定した場合は法令違背となる。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)らが陸奥湾内で水底電線を引揚げたことにより損害を受けたとして損害賠償を請求した。被上告人は、引揚屯数約104トン、被害屯数約95トンという事実を主張したが、上告人らはこの事実を争っていた。しかし、一審判決(及びそれを引用した原判決)は、上告人らが当該事実を明らかに争っていないとして、擬制自白が成立したものとみなして事実を認定した。
あてはめ
本件記録および原判決の事実摘示によれば、上告人らは被上告人が主張する電線の引揚屯数および被害屯数について明確に争っている。それにもかかわらず、原審が「明らかに争わないので自白したものとみなす」と判断したのは、争いのある事実を証拠によらずに認定したものであり、事実認定のプロセスにおいて重大な違法があるといえる。
結論
原判決には争いのある事実を証拠によらずに認定した違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
弁論主義の第2テーゼ(自白の拘束力・不要証効)および擬制自白の適用の限界を示す。答案上は、当事者の主張が対立している場面で、安易に証拠調べを省略して事実認定を行うことの危険性を指摘する際に有用である。
事件番号: 昭和36(オ)1050 / 裁判年月日: 昭和38年8月30日 / 結論: 棄却
不法行為による肉体的精神的苦痛に対する慰藉料請求を理由あらしめる事実として、当事者の主張しない「左耳が遠くなり」「時々腰痛がある」との事実も認定したからといつて、当事者の申し立てざる事項に付き判決したことには当らない。