判旨
不法行為に基づき、捜査機関への誤った犯人申告によって被申告者が勾留され、新聞記事で名誉を毀損された場合、その間に警察官や検察官の判断、新聞記者の取材行為等が介在したとしても、相当因果関係は否定されない。
問題の所在(論点)
民法709条の不法行為において、加害者の虚偽または過失による申告と、その後の捜査機関による勾留および新聞報道による損害との間に、他人の行為が介入した場合でも相当因果関係が認められるか。
規範
不法行為の成立に要する相当因果関係の判断において、行為者の行為の後に第三者の行為が介入したとしても、当該第三者の行為が行為者の行為を機縁として誘発されたものである場合や、当初の行為から通常予見し得る範囲のものである場合には、相当因果関係は断絶されない。
重要事実
上告人は、確たる証拠がないにもかかわらず、漠然とした記憶に基づいて軽々しく被上告人を真犯人と断定し、捜査当局に対し「犯人であることに間違いない」と申告した。この申告に基づき、捜査機関は被上告人を勾留し、また、その事実が新聞紙上に掲載されるに至った。上告人は、勾留や新聞掲載は捜査機関や報道機関の独自の判断によるものであり、自らの申告との間に因果関係はないと主張した。
あてはめ
上告人は、真偽を確認すべき確実な根拠を欠く中で、記憶のみに頼って軽率に犯人申告を行っており、これには過失が認められる。この申告を受けて捜査機関が身辺調査や勾留を行い、さらに報道機関がそれを社会的事実として掲載することは、事案の性質上、申告から通常生じ得る事態の連鎖である。したがって、捜査機関や新聞社の行為が間に介在したとしても、それらは上告人の申告を直接の原因として誘発された一連の流れに属するため、申告と損害との間の相当因果関係は妨げられない。
結論
上告人の申告と、被上告人の勾留および新聞掲載による損害との間には相当因果関係が存在し、不法行為が成立する。
実務上の射程
被害届や告訴・告発が虚偽または過失によるものであった場合の損害賠償責任を検討する際に、介在事情(公権力の行使や報道)による因果関係の断絶を否定する有力な根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)398 / 裁判年月日: 昭和32年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為に基づく損害賠償において、加害行為が被害者の障害の全面的原因であると認められる場合には、その後の病状等の事情を考慮して損害賠償額を制限することはできず、諸般の事情を参酌して算定された慰謝料額は正当である。 第1 事案の概要:上告人ら(加害者)は、被上告人(被害者)に対して傷害行為に及んだ。…
事件番号: 昭和34(オ)39 / 裁判年月日: 昭和36年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の認定しない事実を前提とするものや、実質的に原審の適法な証拠取捨・事実認定を非難するにすぎない場合は、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決の事実認定に違法があるとして上告を申し立てた。しかし、その主張の内容は、原審が認定した事実とは異なる事実を前提とするものや…