判旨
行政事件訴訟法24条(旧特例法9条)の職権証拠調べ等の規定は、裁判所が当事者の申立てを待たずに自主的に行い得ることを定めたものであり、裁判所に常に義務を課したものではない。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟特例法(現行行政事件訴訟法24条等)が定める職権証拠調べ等の規定は、裁判所にその実施を義務付ける趣旨か。すなわち、職権調査を尽くさなかったことが直ちに審理不尽の違法を構成するか。
規範
行政訴訟における職権証拠調べの規定(行政事件訴訟特例法9条、現行行政事件訴訟法24条)は、裁判所が審理の適正を期するために、当事者の申立てを待たず自主的に職権を行使できる権能を付与したものである。したがって、これらの規定は裁判所に対し、職務として必ず行使しなければならないという法的義務を課したものではないと解される。
重要事実
上告人らは、行政訴訟において裁判所が職権主義に基づき自ら調査を行うべきであったにもかかわらず、原審がその調査を怠り審理不尽の違法を犯したと主張して上告した。原審においては一定の証拠調べが行われた上で判決が下されていたが、上告人らはさらに積極的な職権行使が義務的であると主張したものである。
あてはめ
行政事件訴訟における職権主義的な規定は、裁判所が裁量により機動的に証拠調べを行うことを可能にする「権能規定」である。本件原審においては既に十分な証拠調べが行われており、その上で事実認定がなされている。裁判所に職権行使の義務があることを前提とする上告人の主張は、規定の法的性質を誤解したものであり、職権を怠ったという非難は当たらない。
結論
行政訴訟における職権証拠調べは裁判所の権能であって義務ではなく、職権を行使しなかったことのみをもって審理不尽の違法があるということはできない。
実務上の射程
現行行政事件訴訟法24条(職権証拠調べ)の解釈として確立した判例である。行政訴訟においても弁論主義が原則であり、職権証拠調べが義務となるのは、事案の真相解明に不可欠でありながら当事者が立証できない特段の事情がある場合に限定されるという、後の実務・判例の基礎となっている。
事件番号: 昭和27(オ)284 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法による農地買収計画について異議決定を経ない正当な事由がある場合には、右異議決定を経ない訴願は適法である