判旨
土地の賃貸人が借地法12条に基づき地代の増額を請求した場合、裁判所が地代家賃統制令の認可額を超える額を正当と認めて定めても、その額が新たに改定増額された認可統制額となるため違法ではない。
問題の所在(論点)
借地法に基づく地代増額請求において、裁判所が地代家賃統制令に基づく認可統制額(公定価格)を超える額を正当な地代として決定できるか。
規範
土地の賃貸人が借地法12条(現:借地借家法11条1項)に基づき地代増額請求を行い、裁判所がこれを正当と認めて裁判によって地代を定めた場合、その確定した地代額が地代家賃統制令10条にいう「認可統制額」としての効力を有する。したがって、公定価格制度下であっても、裁判所の判断により認可額を超える地代を定めることは適法である。
重要事実
土地の賃貸人が借地法12条(旧法)に基づき、借主に対して地代の増額を請求した。当時の地代は、物価統制を目的とした地代家賃統制令10条による認可統制額によって上限が制限されていた。裁判所は審理の結果、この認可額を超える額が正当な地代であると認めて増額を認める判決を下した。これに対し、被告(借主)側が、統制令の認可額を超える額を裁判で定めることは違法であるとして上告した。
あてはめ
地代増額請求権は、経済情勢の変動等により地代が不相当となった場合に認められる形成権的性質を有する権利である。裁判所が借地法12条に基づき地代を正当と認めて改定する場合、その司法判断は統制令の認可手続に代わる性質を包含する。裁判所が証拠に基づき正当と認めて定めた額は、そのまま新しく改定増額された認可統制額とみなされるため、形式的に従前の認可額を超えていたとしても、統制法令に違反する結果を招くものではないと解される。
結論
裁判所が借地法に基づき、地代家賃統制令の認可額を超える地代を定めても、それは新たに改定された認可額となるため違法ではない。
実務上の射程
現在は地代家賃統制令が廃止されているため、本判決の直接の射程は及ばないが、公的規制と民事裁判上の賃料決定権限の調整のあり方を示す。現代の借地借家法11条、32条における「相当な賃料」の判断においても、公的なガイドラインや指標を裁判所が司法判断によって上書きできるという法的思考の基礎として参照し得る。
事件番号: 昭和36(オ)621 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: 棄却
借地人が借地上に所有している建物を自己経営の旅館営業のために使用している場合には、建物の一部を居住の用に供していると否とにかかわらず、又、事業用床面積の広狭にかかわらず、右借地の地代について、地代家賃統制令の適用がない(昭和三七年二月一五日第一小法廷判決、民集一六巻二号二六五頁参照)。