地代家賃統制令の適用のある借地又は借家につき裁判、裁判上の和解又は調停によつて地代又は家賃の額を定める場合には、停止統制額又は認可統制額を超えてでも適正な額を定めることができる。
地代家賃統制令の適用のある借地又は借家につき裁判、裁判上の和解又は調停により地代又は家賃の額を定める場合と統制額
地代家賃統制令10条,借地法12条1項,借家法7条1項
判旨
地代家賃統制令の適用がある場合でも、裁判所は同令10条に基づき、統制額に拘束されず適正な額を定めることができる。ただし、その額は同令の趣旨を尊重し、統制額をも考慮に入れた相当な金額でなければならない。
問題の所在(論点)
地代家賃統制令の適用を受ける借地等の賃料について、裁判所が借地法12条1項(当時)等に基づき賃料を定める際、同令の定める統制額を超えて定めることができるか。
規範
地代家賃統制令10条は、裁判等により賃料が定められた場合にその額を認可統制額とする旨を規定しており、これは裁判所が統制額に拘束されず適正な額を定めうることを予定したものである。もっとも、決定される額が「適正」といえるためには、同令の趣旨を尊重し、当該借地借家に適用される統制額をも考慮に入れた相当な金額であることを要する。
重要事実
上告人の所有する土地につき、地代家賃統制令の適用がある中で地代の増額請求がなされた事案である。原審は、約17年間にわたり賃料が据え置かれていたこと、土地価格や公租公課、近隣賃料の上昇、物価変動等の経済事情を総合し、既定の賃料(坪当たり月額5円12銭)が不相当になったと判断。同令10条に基づき、統制額を超えて適正な額を定めたところ、上告人が同令10条の解釈誤りを主張して上告した。
あてはめ
地代や家賃は地域性・個別性を有するため、行政による画一的な統制額の修正では具体的妥当性を欠くおそれがある。本件では、17年間に及ぶ地価・物価の著しい上昇という経済事情の変化があり、行政上の統制額を維持することは不合理といえる。したがって、紛争解決を目的とする裁判においては、統制額を考慮に入れつつも、諸般の事情を総合して算出される適正な額を定めることが認められる。
結論
地代家賃統制令10条に基づき、裁判所は統制額に拘束されることなく、同令の趣旨を尊重した範囲内で、統制額を超える適正な賃料を定めることができる。
実務上の射程
行政法規による私法上の価格統制が存在する場合であっても、裁判所による具体的妥当性を図るための裁量的判断を肯定した事例。司法試験等においては、公法的な規制と私法上の形成権(賃料増減額請求権)の関係を論じる際の参照判例となる。特に「統制額をも考慮に入れた相当な金額」という限定を付している点が重要である。
事件番号: 昭和36(オ)621 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: 棄却
借地人が借地上に所有している建物を自己経営の旅館営業のために使用している場合には、建物の一部を居住の用に供していると否とにかかわらず、又、事業用床面積の広狭にかかわらず、右借地の地代について、地代家賃統制令の適用がない(昭和三七年二月一五日第一小法廷判決、民集一六巻二号二六五頁参照)。
事件番号: 昭和42(オ)1010 / 裁判年月日: 昭和43年7月5日 / 結論: 棄却
借地法第一二条による賃料増額請求があつた場合、裁判所は同条所定の諸契機を考量し、具体的事実関係に即し、相当賃料を確定すべきであり、その際、底地価格に利子率を乗ずる算定方法(土地価格の利廻り算定方式)も一つの合理的尺度として使用できるものではあるが、この算定方法が他の合理的算定方法に比して本則であるとまで解すべきものでは…