判旨
借地借家法11条1項(旧借地法12条)に基づく地代増額請求において、土地価格や租税の急激な上昇等の諸般の事情を考慮した結果、地代が約3倍に増額される場合であっても、それが客観的に相当な額である限り、公序良俗等に反する不当なものとはいえない。
問題の所在(論点)
土地時価や租税の急増を背景とする地代増額請求において、約3倍という高い値上げ率による増額が認められるか。また、その際の「客観的に相当な地代」の判断基準が問題となる。
規範
地代増額請求権(借地借家法11条1項、旧借地法12条)の成否及び増額後の相当賃料額の算定にあたっては、土地に対する租税その他の公課の増減、土地の価格の上昇その他の経済事情の変動、及び近隣の土地の地代との比較等、諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
本件土地の時価は、昭和28年を125とすると昭和29年上半期には164にまで急騰し、昭和29年2月当時では坪単価2万円であった。また、固定資産税の課税標準となる登録価格も昭和28年の約226万円から翌年には約298万円へ、固定資産税額も約3.6万円から約4.4万円へと上昇していた。さらに、従来の実質的な地代(月額約1万円強)に対し、原審は坪あたり月額50円を客観的に相当な地代と認定した。これに対し上告人は、増額後の地代が従前の3倍を超える過大な値上げであると主張した。
あてはめ
本件では、土地時価が短期間で急騰しており、坪2万円の土地に対して月額坪50円の地代を徴収することは、利回り等の観点から見て不当とはいえない。また、固定資産税額の増大も確認されており、これらの経済事情の変動に照らせば、地代増額請求権の発生要件を満たす。適切な比隣の土地の地代という比較対象が存在しない場合であっても、土地価格の騰貴等の諸事情を総合考慮して導き出された「客観的に相当な地代」に基づく増額であれば、3倍余という値上げ率のみをもって過大と断じることはできない。
結論
本件地代増額請求は正当であり、請求のあった昭和29年2月4日当時において請求権が発生し、翌日以降、月額坪50円への地代増額が認められる。
実務上の射程
本判決は、経済状況の激変期における地代増額の適否を示したものである。答案上は、借地借家法11条1項の要件検討において、固定資産税等の公租公課、土地価格、近隣相場といった個別要素を挙げた上で、それらを「総合考慮」して「客観的に相当な額」を導き出す際の、裁判所の広範な裁量を認める根拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)1130 / 裁判年月日: 昭和37年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法12条(現借地借家法11条1項)の賃料増額請求において、直近の賃料合意が本来合意されるべき適正額よりも低い暫定的なものであった場合には、合意後短期間であっても諸般の事情を考慮して大幅な増額請求が認められる。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は昭和22年に本件宅地を賃料坪10円で賃貸した。…
事件番号: 昭和42(オ)1010 / 裁判年月日: 昭和43年7月5日 / 結論: 棄却
借地法第一二条による賃料増額請求があつた場合、裁判所は同条所定の諸契機を考量し、具体的事実関係に即し、相当賃料を確定すべきであり、その際、底地価格に利子率を乗ずる算定方法(土地価格の利廻り算定方式)も一つの合理的尺度として使用できるものではあるが、この算定方法が他の合理的算定方法に比して本則であるとまで解すべきものでは…