判旨
金銭消費貸借契約の当事者の確定において、組合名義ではなく理事長個人を借主とし、他の者を連帯借主や連帯保証人とする合意が成立したと認められる場合には、当該個人を契約当事者と認めるべきである。
問題の所在(論点)
金銭消費貸借契約において、法人の代表者が関与している場合に、契約当事者を法人と解すべきか、あるいは代表者個人と解すべきか。
規範
契約当事者の確定は、契約締結に至る諸般の事情を総合考慮し、当事者間にいかなる合意が成立したかという事実認定の問題である。法人の役員が関与する場合であっても、名義や保証関係等の客観的事実に基づき、当該役員個人を当事者とする意思合意が認められれば、その個人が契約の主体となる。
重要事実
被上告組合と、訴外D薪炭生産工業協同組合(以下「D組合」)の理事長であった上告人A1との間の金銭消費貸借について、その借主が誰かが争われた。具体的には、上告人A1を個人として借主(外に訴外Eを連帯借主、上告人A2及びA3を連帯保証人)とする形式で契約がなされていた。上告人側はD組合との間に成立したものであると主張したが、原審は証拠に基づきA1個人を借主と認定した。
あてはめ
本件では、契約締結の際、上告人A1が単にD組合を代表して行動したのではなく、A1個人が借主となり、さらに訴外Eが連帯借主、上告人A2及びA3が連帯保証人になるという形が採られている。このような人的担保の設定状況や契約の形式を総合すれば、被上告組合とA1個人との間に消費貸借契約を成立させる意思の合致があったと認められる。したがって、D組合ではなくA1個人を当事者とした原審の事実認定は正当である。
結論
本件消費貸借契約は、D組合ではなく上告人A1個人との間に成立したものと認められる。
実務上の射程
契約当事者の確定という事実認定の局面で活用される。特に、法人の肩書を有する者が契約に関与している場合、署名のみならず連帯保証人の有無や契約書の記載形式から、個人としての責任を問いうるかという判断指針となる。実務上は、代理・代表の抗弁を排斥する際の認定根拠として機能する。
事件番号: 昭和31(オ)329 / 裁判年月日: 昭和34年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭の交付が売買契約の証拠金として売主に交付されたに過ぎない場合、第三者がその交付を受け、または同一の経済的利益を受けたとは認められないため、当該第三者との間での消費貸借契約は成立しない。 第1 事案の概要:上告人は、売主である訴外会社との間で売買契約を締結する際、証拠金として50万円を交付した。…