判旨
行政処分は、外部に表示されてはじめて効力を生ずるため、内部的な意思決定に留まる段階では効力を持たず、後にこれを取り消して異なる意思決定をしても違法ではない。
問題の所在(論点)
行政処分が効力を発生するための要件(外部への表示の要否)及び、外部に表示されていない意思決定を取り消して別の決定をすることの是非。
規範
行政処分が法的効力を発生させるためには、行政庁の内部的な意思決定のみでは足りず、その意思が外部に対して表示されることを要する。外部に表示されていない段階では、単なる内部的事項に過ぎず、拘束力を生じない。
重要事実
上告人は、昭和22年3月31日に承認の議決(行政処分)がなされたと主張したが、当該議決は外部に対して表示されていなかった。その後、行政庁側は当該議決を取り消し、異なる内容の議決を行ったため、上告人がその違法性を争った。
あてはめ
本件における昭和22年3月31日の承認議決は、行政庁の内部的な意思決定が行われたに止まり、外部に表示されていない。したがって、行政処分としての効力をいまだ生じていないといえる。このように効力が発生していない以上、行政庁が後にこれを取り消して異なる議決を行ったとしても、適法な手続の範囲内であり、違法性は認められない。
結論
行政処分は外部に表示されて初めて効力を生じるため、未表示の議決を後に取り消して別個の判断をしても違法ではない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政処分の成立時期・効力発生時期に関するリーディングケースである。答案上は、処分の取消しや撤回の制限(信頼保護)が問題となる場面で、前提として「そもそも処分が成立し効力を発しているか」を検討する際に、外部表示の有無を確認する基準として用いる。
事件番号: 昭和27(オ)1149 / 裁判年月日: 昭和29年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売渡処分が完了し効力を生じた後は、後日農地委員会が売渡計画の取消を決議し申達したとしても、既になされた処分の効力は当然には左右されない。また、強制譲渡の義務は県知事による譲渡令書の交付によって発生するため、単なる計画の申達段階では売渡処分の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:本件農地…
事件番号: 昭和30(オ)268 / 裁判年月日: 昭和32年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が複数の理由に基づいて行われた場合、その一部の理由が不当であっても、他の正当な理由のみによって処分の基礎が十分に維持されるのであれば、当該処分を違法とすべきではない。 第1 事案の概要:地主Dが、小作人である上告人との農地賃貸借契約を解約するため、知事に対し農地調整法に基づく解約許可申請を…
事件番号: 昭和39(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
一 さきに農地賃貸借契約解除許可処分が農地法第二〇条第二項一号に違反することを請求の原因とし、農林大臣宛の訴願が三箇月を経過しても裁決されないと主張して訴願の裁決を経ることなく、知事を相手どり、右処分の取消を求める訴を提起して敗訴の確定判決を受けた者が、右訴の口頭弁論終結後にいたり前記訴願について棄却の裁決がなされたと…