一 土地およびその上に生立する立木をともに買い受けた者が、土地につき所有権取得登記をしたときは、たとえその後立木につき前所有者のため、保存登記がなされても、この登記は無効である。 二 解除権を有する者が久しきに亘りこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至つたため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、右解除は許されないと解するのが相当であるが、原審認定の事実関係(原判決参照)の下における解除権の行使は、未だ右の場合に該当するものと認めることはできない。
一 地盤について所有権移転登記がなされた後に、立木についてなされた保存登記の効力 二 解除が許されないと解すべき一事由およびこれに該当しないと認められた一事例
民法177条,民法1条2項,民法540条1項,民法612条,立木ニ関する法律1条,立木ニ関する法律2条
判旨
解除権の行使が信義則違反となるのは、権利者が長期にわたり権利を行使せず、相手方がその権利はもはや行使されないと信頼すべき正当の事由を有し、その後の行使が信義誠実に反すると認められる特段の事由がある場合に限られる。
問題の所在(論点)
民法1条2項(信義誠実の原則)に基づき、長期間行使されなかった解除権の行使が否定されるための要件(いわゆる失効の原則の適用要件)。
規範
解除権を有する者が久しきにわたりこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至ったため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、解除権は消滅(失効)し、その行使は許されない。
重要事実
本件において、解除権を有する側(被上告人)が相当の長期間にわたり解除権を行使しなかった事実は認められる。これに対し、解除権を告知された側(上告人)は、長期間の権利不行使を理由として、もはや解除権は行使されないという信頼が生じており、その後の解除権行使は信義則に反し許されない(失効の原則)と主張して争った。
あてはめ
解除権が長期間行使されなかった事実は認められるものの、原審が認定した一切の事実関係を考慮しても、相手方である上告人において「解除権がもはや行使されない」と信頼すべき正当な事由があったとは認められない。また、本件解除権の行使が信義誠実に反すると認めるべき特段の事由も認められない。したがって、単なる期間の経過のみをもって失効の原則を適用することはできない。
結論
本件解除は有効であり、失効の原則による解除権行使の制限は認められない。
実務上の射程
権利の失効を主張する際のリーディングケース。単なる長期間の不行使(時の経過)だけでなく、義務者側における「正当な信頼」と、権利行使を拒絶すべき「特段の事由」の2要件を厳格に求めている。答案上では、消滅時効前であっても信義則により権利行使が制限される場面で引用する。
事件番号: 昭和28(オ)72 / 裁判年月日: 昭和29年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の成否について、原審が認定した事実に基づき、権利の濫用を認めるべきでないとした原判決の判断を正当として維持したものである。 第1 事案の概要:上告人は、相手方の行為が権利濫用に該当すると主張して上告したが、具体的な事案の内容や原因となった紛争の詳細は本判決文からは不明である。原審(二審)は…
事件番号: 昭和28(オ)1188 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】解除権者が長期間権利を行使せず、相手方がその権利はもはや行使されないと信頼すべき正当の事由を有し、その後の行使が信義誠実に反すると認められる特段の事由がある場合には、解除権の行使は許されない。 第1 事案の概要:被上告人(解除権者)は、上告人に対して発生した解除権を約4年1ヶ月の長期間にわたって行…