判旨
農地の売渡処分が完了し効力を生じた後は、後日農地委員会が売渡計画の取消を決議し申達したとしても、既になされた処分の効力は当然には左右されない。また、強制譲渡の義務は県知事による譲渡令書の交付によって発生するため、単なる計画の申達段階では売渡処分の効力に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
行政処分の効力が発生した後に、その前提となる計画が取消決議された場合、既になされた処分の効力に影響を及ぼすか。また、新たな強制譲渡計画の策定・申達という準備段階の手続によって、既存の処分の効力が左右されるか。
規範
行政処分が既に完了し、法的な効力を確定的に発生させた場合、その後に処分庁や関係機関が内部的な計画の取消や変更を決定したとしても、特段の法的根拠がない限り、既になされた処分の効力が当然に消滅したり、遡及的に無効となったりすることはない。また、法的義務の発生に特定の形式(令書の交付等)を要する処分については、その手続が完了するまでは対外的な法的効力を生じない。
重要事実
本件農地に関し、国による売渡処分が既に完了して効力を生じていた。その後、D農地委員会が当該売渡計画の取消を決議して県農地委員会に申達した。さらに、村農業委員会が強制譲渡計画を定めて県知事に申達したが、県知事による譲渡令書の交付までは至っていなかった。上告人は、これらの事後的な計画取消や強制譲渡計画の存在を理由に、既になされた売渡処分の無効または失効を主張して争った。
あてはめ
本件売渡処分は既に完了しており、その時点で法的効力が確定している。D農地委員会による事後の取消決議および申達は、既に有効に成立した処分の効力を当然に覆すに足りる法的効果を持つものではない。また、強制譲渡については、県知事が譲渡令書を所有者に交付して初めて譲渡義務という法的効果が生じるものである。本件では単に村農業委員会が計画を申達した段階に留まっており、いまだ対外的な法的効力を発生させていない。したがって、先行する売渡処分の効力は何ら影響を受けないと解される。
結論
本件売渡処分は有効であり、事後の委員会による取消決議や、令書交付に至らない強制譲渡計画の申達によってその効力が左右されることはない。
事件番号: 昭和39(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
一 さきに農地賃貸借契約解除許可処分が農地法第二〇条第二項一号に違反することを請求の原因とし、農林大臣宛の訴願が三箇月を経過しても裁決されないと主張して訴願の裁決を経ることなく、知事を相手どり、右処分の取消を求める訴を提起して敗訴の確定判決を受けた者が、右訴の口頭弁論終結後にいたり前記訴願について棄却の裁決がなされたと…
実務上の射程
行政処分の安定性を重視する判断であり、処分完了後の内部的な事情変更や計画の変更が、当然には既発生の法的効果を覆さないことを示す。答案上は、行政行為の取消し・撤回が問題となる場面で、明示的な取消処分がなされない限り「当然に効力が左右されるものではない」とする論拠として活用できる。また、手続のどの段階で対外的な効力が生じるか(本件では令書の交付)という点も重要である。
事件番号: 昭和28(オ)1049 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分は、外部に表示されてはじめて効力を生ずるため、内部的な意思決定に留まる段階では効力を持たず、後にこれを取り消して異なる意思決定をしても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月31日に承認の議決(行政処分)がなされたと主張したが、当該議決は外部に対して表示されていなかった。…
事件番号: 昭和39(オ)1229 / 裁判年月日: 昭和40年3月4日 / 結論: 棄却
農地賃貸借契約の締結に際し、農地法第二五条所定の書面を作成しなくても、右農地賃貸借契約が無効とはならない。
事件番号: 昭和24(オ)35 / 裁判年月日: 昭和28年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】確認の訴えは、現在の権利又は法律関係の存否を対象とすべきであり、過去の法律関係の確認を求める訴えは、原則として確認の利益を欠き不適法である。 第1 事案の概要:上告人(土地所有者)は、無断譲渡を理由に賃貸借契約を解除したとして、占有者である被上告人らに対し土地明渡請求等を提起した。しかし、訴訟継続…
事件番号: 昭和27(オ)639 / 裁判年月日: 昭和29年10月8日 / 結論: 棄却
村農地委員会が、はじめ売渡の相手方を甲と定めた農地売渡計画を樹立し、公告縦覧の手続を践み、県農地委員会の承認を受けた後、売渡の相手方を乙に変更する旨の議決をなしてその旨甲および乙に通知し、次いで知事から乙に対し売渡通知書を交付した場合においては、乙に対する農地の売渡処分は当然無効と認むべきである。