農地賃貸借契約の締結に際し、農地法第二五条所定の書面を作成しなくても、右農地賃貸借契約が無効とはならない。
農地法第二五条所定の書面の作成と農地賃貸借契約の効力。
農地法25条
判旨
農地法25条(旧農地調整法9条の10)が農地賃貸借の当事者に対し、書面の作成を義務付けているのは、農地関係を明確にする趣旨の規定であり、書面を作成しなかったからといって、当該賃貸借契約が当然に無効となるものではない。
問題の所在(論点)
農地賃貸借契約において、農地法25条(旧農地調整法9条の10)が定める書面の作成を欠く場合に、当該契約は私法上無効となるか。
規範
農地法25条(旧農地調整法9条の10)は、農地賃貸借の当事者に対して書面の作成を義務付けているが、これは農地に係る権利関係の明確化を図るための行政的・指導的規定であり、効力規定ではない。したがって、同条所定の書面が作成されていない場合であっても、私法上の合意としての農地賃貸借契約の効力は妨げられない。
重要事実
被上告人(賃貸人)は、所有する本件農地につき、上告人(賃借人)との間で耕作を目的とする賃貸借契約を締結した。しかし、当該契約の締結に際し、当時の農地調整法9条の10(現在の農地法25条)が規定する書面の作成がなされていなかった。そのため、上告人は当該契約の有効性や存続を争い、書面がない以上は契約が無効である旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和27(オ)1149 / 裁判年月日: 昭和29年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売渡処分が完了し効力を生じた後は、後日農地委員会が売渡計画の取消を決議し申達したとしても、既になされた処分の効力は当然には左右されない。また、強制譲渡の義務は県知事による譲渡令書の交付によって発生するため、単なる計画の申達段階では売渡処分の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:本件農地…
あてはめ
農地法が農地賃貸借の当事者に書面作成を義務付けているのは、農地の利用関係をめぐる紛争を防止し、権利関係を客観的に明確にするという点に主眼がある。本件においても、当事者間に耕作を目的とする賃貸借の合意が存在する以上、書面の欠如という形式的不備のみをもって直ちに合意の効力を否定することは法の趣旨ではない。したがって、書面が作成されていない事実は、賃貸借契約を失効させる理由には当たらないと評価される。
結論
書面の作成を欠いていても農地賃貸借契約は無効とならない。よって、本件賃貸借関係はなお現存する。
実務上の射程
農地法上の形式的義務違反が私法上の契約効力に影響するかという「効力規定か否か」の論点において、本判例はこれを否定する立場を明確にしている。答案上は、農地法が農民保護や農業生産力の維持を目的とする強行法規的側面を持つ一方で、書面作成義務については公証的・指導的性格に留まることを示す際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)109 / 裁判年月日: 昭和32年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の賃貸借契約その他借地権の発生原因となる合意が存在しない場合には、たとえ地上建物の登記があっても、建物保護法(現・借地借家法10条)による対抗力は認められない。 第1 事案の概要:上告組合(被告)は、被上告人(原告)の所有地について借地権を主張していた。しかし、原審において、被上告人と上告組合…
事件番号: 昭和29(オ)739 / 裁判年月日: 昭和31年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧会計規則85条(現在の会計法に相当)は、国が契約を締結する際、契約書の作成を契約の成立要件(要式性)として定めたものではない。 第1 事案の概要:上告人と国との間で土地の接収・利用等に関する契約上の争いが生じた。上告人は、契約書の作成がなされていないことを根拠に、旧会計規則85条に照らして契約の…
事件番号: 昭和24(オ)35 / 裁判年月日: 昭和28年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】確認の訴えは、現在の権利又は法律関係の存否を対象とすべきであり、過去の法律関係の確認を求める訴えは、原則として確認の利益を欠き不適法である。 第1 事案の概要:上告人(土地所有者)は、無断譲渡を理由に賃貸借契約を解除したとして、占有者である被上告人らに対し土地明渡請求等を提起した。しかし、訴訟継続…
事件番号: 昭和33(オ)379 / 裁判年月日: 昭和34年12月10日 / 結論: 棄却
農地の小作権譲渡契約につき臨時農地等管理令第七条ノ二所定の地方長官の許可を受けていなくても、右契約は当然無効ではない。