農地の小作権譲渡契約につき臨時農地等管理令第七条ノ二所定の地方長官の許可を受けていなくても、右契約は当然無効ではない。
臨時農地等管理令第七条ノ二違反の農地の小作権譲渡契約の効力。
臨時農地等管理令7条ノ2
判旨
臨時農地等管理令7条の2は、農地を耕作地として確保する趣意の下に設けられた取締規定である。したがって、地方長官の許可を受けない小作権譲渡契約であっても、当然に私法上の効力が無効となるものではない。
問題の所在(論点)
臨時農地等管理令7条の2(地方長官の許可を要する規定)に違反してなされた小作権の譲渡契約が、私法上無効となるか。
規範
法規の目的が、社会経済秩序の維持や行政上の管理を目的とする「取締規定」に留まる場合、これに違反する行為であっても直ちに私法上の効力が否定されるものではない。規定の趣旨が、当該行為の私法上の効力までも否認して公序良俗(民法90条)に反すると評価すべき強行規定であるか否かによって判断すべきである。
重要事実
上告人と相手方との間で農地の小作権譲渡契約が締結された。しかし、当該譲渡にあたっては、当時施行されていた臨時農地等管理令7条の2に基づき必要とされる地方長官(知事)の許可を得ていなかった。上告人は、同規定が強行規定であることを前提に、許可のない譲渡契約は無効であると主張して争った。
あてはめ
臨時農地等管理令7条の2は、当時のわが国が置かれていた社会情勢に鑑み、食糧増産の必要性から農地を耕作地として確実に確保するという行政上の取締りを目的に設けられたものである。このような取締目的の規定は、行政上の制裁の対象にはなり得るものの、私人間で合意された契約の効力までを一律に否定する趣旨までを含むものではない。したがって、許可を欠くという一事をもって直ちに契約が当然無効になるわけではないと解される。
結論
臨時農地等管理令7条の2の許可を受けていない小作権譲渡契約であっても、それだけの理由で当然に無効となるものではない。
実務上の射程
行政法規違反の私法上の効力が問題となる「取締規定か強行規定か」の典型的な判断枠組みを示す。司法試験においては、行政上の許可を欠く契約の有効性を民法90条(公序良俗)や強行規定違反の問題として論じる際の基礎となる。農地法等の現行法下では別途規定があるが、法規の趣旨から私法上の効力を画定する手法として重要である。
事件番号: 昭和31(オ)1114 / 裁判年月日: 昭和32年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法108条(自己契約・双方代理)に違反する代理行為の効果は、絶対的に無効ではなく無権代理行為に該当し、本人の追認により有効となり得る。 第1 事案の概要:上告人は、相手方のなした行為が民法108条に抵触するものであると主張し、そのような行為は絶対に無効であると論じて争った。判決文からは具体的な取…
事件番号: 昭和27(オ)1153 / 裁判年月日: 昭和28年9月15日 / 結論: 棄却
臨時農地管理令第七条ノ二はいわゆる取締規定に過ぎないから、同条所定の地方長官の許可を受けなくても、農地売買契約は無効ではない。
事件番号: 昭和39(オ)754 / 裁判年月日: 昭和41年5月17日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第七条の二及び第五条の各規定は取締規定であり、右各条所定の地方長官の許可は農地の賃貸借の有効要件ではない。