臨時農地管理令第七条ノ二はいわゆる取締規定に過ぎないから、同条所定の地方長官の許可を受けなくても、農地売買契約は無効ではない。
臨時農地管理令第七条ノ二違反の農地売買契約の効力
臨時農地等管理令7条ノ2,農地調整法(昭和20年法律64条により改正のもの)5条,農地調整法(昭和20年法律64条により改正のもの)6条3号,農地調整法(昭和20年法律64条により改正のもの)附則5条,農地調整法(昭和21年法律42号により改正のもの)4条,農地調整法(昭和21年法律42号により改正のもの)附則2項
判旨
臨時農地管理令7条の2の規定は、農地を耕作地として確保するための取締規定にすぎず、同条の許可を得ない農地売買契約であっても私法上の効力は当然には妨げられない。
問題の所在(論点)
臨時農地管理令7条の2に基づき、地方長官の許可を得ずになされた農地の売買契約および所有権取得が、私法上有効といえるか。同条が効力規定か、それとも取締規定かが問題となる。
規範
行政上の許可を定めた法規が、単に「許可を受けるべし」と規定するに留まり、許可のない行為を無効とする明文を置いていない場合、その規定の性質が取締目的であるときは、これに反する私法上の契約の効力は否定されない。臨時農地管理令7条の2は、農地の耕作地確保という取締目的の規定であり、効力規定ではないと解すべきである。
重要事実
被上告人(買主)は、昭和20年1月22日、上告人(売主)から2筆の農地を耕作目的で買い受け、同年5月12日にその引渡しを受けた。当時施行されていた臨時農地管理令7条の2は、農地の所有権移転につき地方長官の許可を求めていたが、本件売買において被上告人は当該許可を得ていなかった。そのため、許可のない売買契約および所有権移転の効力が争われた。
あてはめ
臨時農地管理令7条の2の文言は「許可を受くべし」とのみ規定し、後の農地調整法改正後の規定(許可がなければ効力を生じない旨の明文)とは異なる。同規定は農地を耕作地として確保するための行政上の取締を目的とするものである。したがって、本件売買において地方長官の許可を得ていなくても、売買契約が当然に無効となるものではなく、また所有権の取得が妨げられることもない。
結論
許可を得ていないことを理由に所有権取得を無効とすることはできない。被上告人は本件農地の所有権を有効に取得する。
実務上の射程
行政法規に違反する私法上の行為の効力を判断する際、「取締規定」か「効力規定」かを区別する枠組みの典型例である。本判決は、文理・沿革・目的から取締規定と判断しており、現代の行政規制と私契約の効力が問題となる場面(無資格者による契約等)でも同様の論理構成が用いられる。
事件番号: 昭和28(オ)315 / 裁判年月日: 昭和29年7月16日 / 結論: 破棄差戻
臨時農地等管理令第七条ノ二の地方長官の許可は、農地の所有権移転を目的とする契約の有効要件ではない。
事件番号: 昭和31(オ)517 / 裁判年月日: 昭和35年4月1日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第五条はいわゆる取締規定にすぎないから、同条所定の地方長官の許可がなくても、農地を耕作以外の目的に供するためその所有権を取得する契約は無効ではない。
事件番号: 昭和52(オ)257 / 裁判年月日: 昭和52年10月11日 / 結論: 棄却
農地法五条の許可を条件とする農地の売買契約が締結され、買主甲が所有権移転の仮登記を経由した場合において、右許可前に、売主乙がさらに丙に売り渡し、乙丙間で同条所定の許可を得て丙においてこれを宅地化したため、乙甲間の売買契約が完全にその効力を生じたときは、甲は、右仮登記に基づき、乙に対し本登記手続を請求し、所有権移転登記を…