判旨
売買契約解除後の損害賠償額の算定において、解除当時における目的物の時価相当額を標準として、商人である買主に通常生ずべき損害を算定することは正当である。
問題の所在(論点)
債務不履行による契約解除が行われた場合、損害賠償額の算定基準時および算定基準額をどのように決定すべきか。特に、販売業者が得べかりし利益を「通常損害」として請求できるか。
規範
債務不履行を理由とする契約解除に伴う損害賠償について、特段の事情がない限り、解除当時における目的物の時価相当額を標準として算定すべきであり、債権者が当該物品の販売業者である場合には、その転売等により得られたであろう利益を含む「通常生ずべき損害」(民法416条1項)として認められる。
重要事実
木材販売業者である被上告人と、上告人との間で木材の売買契約が締結された。上告人(売主)の木材引渡義務について債務不履行が発生したため、被上告人(買主)は契約を解除した。被上告人は、引渡予定地において当該木材を処分(転売)して得られたはずの利益を失ったとして、損害賠償を請求した。
あてはめ
本件では、上告人の債務不履行を理由とする売買契約の解除は有効である。被上告人は木材販売業者であり、契約が履行されていれば引渡現地で木材を転売して利益を得られたはずである。したがって、解除当時における当該木材の時価相当額を標準として算定された損害は、特別の事情の予見可能性を問うまでもなく、販売業者に「通常生ずべき損害」の範囲内に含まれると解される。
結論
契約解除当時における目的物の時価相当額を基準として損害額を算定した原審の判断は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(オ)474 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
売買代金前渡金一〇万円の残金七万円の返還請求を、前渡金残金五万円と別途貸金二万円の支払請求に変更した場合、その変更が、始め被告の弁済金五万円を、三万円前渡金に、二万円別途貸金に合意充当したものと主張し、後に五万円全額前渡金に合意充当した旨主張を改めたことによるものであるときは、貸金請求の追加についても、請求の基礎に変更…
契約解除時の時価を基準とする原則を確認した判例である。商人間の売買において「得べかりし利益(転売利益)」が当然に通常損害に含まれることを示す文脈で使用できる。
事件番号: 昭和36(オ)87 / 裁判年月日: 昭和38年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の債務不履行により解除となった際、債務整理の必要上、物件を不利な条件で早急に転売せざるを得なかったという特別事情がある場合、当該転売価格と当初の売買価格との差額を損害として賠償請求でき、その算定に際して物件の時価を確定する必要はない。 第1 事案の概要:買主(上告人)の代金支払債務不履行に…
事件番号: 昭和27(オ)105 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約が解除された場合における債務不履行を理由とする損害賠償額は、目的物の引渡しがなされていれば買主が享受できたはずの解除当時の時価と代金との差額を含む。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は、上告人(売主)から製麺機械を買い受ける契約を締結したが、上告人の債務不履行により当該契約を解除した。本…