判旨
行政事件訴訟法25条2項に基づく執行停止の申立ては、取消訴訟の対象となっている処分自体に対してなされるべきものであり、本案訴訟で争われている処分とは別個の行政処分の執行停止を求めることは認められない。
問題の所在(論点)
取消訴訟が係属している場合において、当該訴訟の対象である行政処分(買収計画に係る裁決)とは別個の行政処分(収去命令)の執行停止を求めることができるか。行政事件訴訟特例法10条2項(現行の行政事件訴訟法25条2項)の適用範囲が問題となる。
規範
執行停止の申立ては、本案訴訟(取消訴訟)の提起があった場合に、その対象となっている処分の効力や執行を一時的に停止させる制度である。したがって、本案訴訟において取消しを求めている対象が、申立てにより停止を求める対象(処分)と同一性を有しない別個の行政処分である場合には、当該執行停止の申立ては認められない。
重要事実
申立人は、山梨県知事による未墾地買収計画に関する訴願裁決の取消訴訟(本案)を提起していた。その際、申立人は右訴訟の判決に至るまで、当該買収計画とは別に発せられた申立人所有物件に対する「収去処分」の執行停止を求めて、裁判所に申し立てを行った。
あてはめ
本件において、上告人が本案訴訟で取消しを求めているのは「山梨県所有の山林に関する未墾地買収計画についての訴願裁決」である。これに対し、本件執行停止の申立てで停止を求めているのは「申立人所有物件の収去命令」である。これら両者は別個の行政処分であると解される。したがって、買収計画に対する訴えの提起を理由に、それとは別個の処分である収去命令の執行を停止させることは、法律の許容するところではない。
結論
本案訴訟の対象ではない別個の行政処分の執行停止を求めることは不適法であり、本件申立ては却下されるべきである。
事件番号: 昭和25(ク)12 / 裁判年月日: 昭和27年10月15日 / 結論: その他
一 行政事件訴訟特例法第一〇条第二項本文が、行政処分の執行停止について一定の制限を設けているからといつて、同条項は、憲法によつて裁判所に与えられた行政事件審判権を侵犯する違憲の法律とはいえない。 二 民訴第四一九条の二第二項が憲法に違反するとの主張は、適法な同条の抗告理由でない。
実務上の射程
執行停止の付随性(本案との密接な関連性)を明確にした判例である。現行法下においても、本案訴訟で争っている処分と執行を止めたい処分が異なる場合(例えば、先行処分の取消訴訟中に後行処分の執行停止を求める場合など)に、原則として認められないことを示す基準として機能する。ただし、違法性の承継が認められるような密接不可分な関係がある場合にどう解すべきかは別途検討を要する。
事件番号: 昭和27(オ)305 / 裁判年月日: 昭和29年6月22日 / 結論: 棄却
買収前の農地所有者が農地買収計画取消の訴訟を提起し、右計画の執行停止決定を得たとしても、買収後の売渡処分によつて右農地の所有権を取得したと主張するものが、その権利保全のためにした仮処分はその理由を失つたものということはできない。
事件番号: 昭和26(マ)7 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】除名処分の執行停止を求める申立てについて、本案である除名決議取消請求訴訟の判決が言い渡され確定した場合には、申立ての利益が消滅するため却下される。 第1 事案の概要:申立人は、地方議会(相手方)が昭和24年10月10日に行った自身に対する除名処分の執行停止を求めていた。しかし、当該除名処分の取消し…
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。
事件番号: 昭和26(オ)354 / 裁判年月日: 昭和28年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の対象が第三者の所有物件のみであり、処分の効果が原告自身の権利(立木及び借地権等)に及ばない場合には、当該処分の取消しを求める法律上の利益は認められない。 第1 事案の概要:山梨県農地委員会は、昭和22年5月21日付で未墾地買収決定を通知した。この買収計画は、山梨県が所有する山林を対象とす…