判旨
行政処分の対象が第三者の所有物件のみであり、処分の効果が原告自身の権利(立木及び借地権等)に及ばない場合には、当該処分の取消しを求める法律上の利益は認められない。
問題の所在(論点)
行政処分の対象が第三者の財産であり、原告が主張する権利(立木・借地権等)が処分の対象に含まれていない場合に、原告に当該処分の取消しを求める「法律上の利益」が認められるか。
規範
行政処分の取消しを求める「法律上の利益」が認められるためには、当該処分によって自己の権利若しくは法律上保護された利益が直接侵害され、又は侵害されるおそれがあることが必要である。処分の内容が他者の財産のみを対象とし、自己の権利に何ら影響を及ぼさない場合には、取消訴訟を提起する適格を欠く。
重要事実
山梨県農地委員会は、昭和22年5月21日付で未墾地買収決定を通知した。この買収計画は、山梨県が所有する山林を対象とするものであった。これに対し、上告人らは、当該買収計画が自分たちが有する立木及び借地権を対象とするものであると主張して、異議、訴願、さらに本訴をもって訴願裁決の取消しを求めた。
あてはめ
本件における買収計画は、山梨県所有の山林を対象とするものであって、上告人らが保有すると主張する立木や借地権の買収を内容とするものではないことが明白である。したがって、上告人らは当該買収計画によって自己の権利を直接侵害されたとはいえず、また本件計画が上告人らの権利を対象としているという誤った前提に基づく主張は、訴えの利益を基礎付ける理由にはならない。
結論
上告人らには本件買収計画にかかる訴願裁決の取消しを求める法律上の利益はない。
実務上の射程
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」に関する初期の判断を示す。処分の対象物が原告の権利と無関係であることが明白な場合には、原告適格(訴えの利益)が否定されるという基本的な考え方を示す。司法試験においては、第三者訴訟における原告適格の検討において、処分が誰のいかなる権利を対象としているかを正確に把握する重要性を示す例として参照される。
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。
事件番号: 昭和28(オ)1206 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法施行規則第一条の二による農林大臣の承認は行政処分ではない。 二 自作農創設特別措置法施行規則第一条の二が自作農創設特別措置法第五条第四号の知事の承認につき農林大臣の承認を要するものと規定しても省令をもつて法律を変更するものではない。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和31(オ)504 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁決の取消しを求める訴訟において、前提となる行政処分が当然無効であるとしても、そのことは裁決の適法性を左右するものではなく、裁決の取消事由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議申立ておよび訴願を行ったが、被上告人(県知事)は訴願期間経過後の不適法なものであると…