判旨
数人が共同の不法行為により建物を占有し、所有者の権利を侵害している場合、各占有者はその占有部分について共同不法占拠者として損害賠償義務や明渡義務を負う。原判決に法令の解釈に関する誤りがあったとしても、認定された事実から結論が正当であれば上告は棄却される。
問題の所在(論点)
当事者の主張がない事実(明渡契約の商行為性)を裁判所が判断の基礎とした点に、判決の結果に影響を及ぼす違法があるか。また、共同不法占拠が認められる場合に、原判決の主文を維持できるか。
規範
共同の不法行為によって他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。数人が共同して建物を不法に占拠している場合、各占有者はそれぞれの占有部分について、共同不法占拠者としての責任を免れない。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人ら(被告)に対し、建物の明渡し等を求めて提訴した。原審は、当初の主張である明渡契約の存在を認めつつ、予備的に主張された不法占有の点についても検討した。その際、当事者の主張がないにもかかわらず明渡契約を「商行為」であると判断する等の手続上の瑕疵があった。しかし、記録によれば、上告人らは建物の各占有部分について、それぞれ共同不法占拠を行っている事実が認められた。
あてはめ
原審が当事者の主張のない事項を判断した点には違法があるといえる。しかし、原審が認定した事実関係を精査すると、上告人らは建物の各占有部分を共同して不法に占拠していると認められる。不法占拠の事実が認められる以上、明渡契約の性質に関する判断に誤りがあったとしても、被上告人の請求を認容した結論自体は正当であると解される。
結論
本件上告は棄却される。原判決に一部不適切な判断があったとしても、認定された共同不法占拠の事実に基づき、結論において原判決主文は維持されるべきである。
実務上の射程
行政事件や民事訴訟において、判決の理由中に一部違法な判断が含まれていたとしても、他の認定事実によって結論(主文)が正当化される場合には、上告理由にならないという「理由の差し替え」の法理を示唆する。実務上は、不法占有に基づく明渡請求において、契約関係の成否にかかわらず不法占拠の事実を予備的に主張・立証しておくことの重要性を示す事例である。
事件番号: 昭和29(オ)945 / 裁判年月日: 昭和30年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数人が共同の不法行為により他人に損害を与えた場合、各加害者は被害者に対し、その損害全額について連帯して賠償する義務を負う。 第1 事案の概要:上告人ら(A1、A2、および株式会社D)は、被上告人が権利を有する不動産を共同で不法に占有した。原審は、A1およびA2による共同不法占有、ならびにA1および…