判旨
占有者が自ら賃貸借契約の成立を主張して占有権原を基礎付けようとした場合において、その事実が認められないときは、当該占有は正当な権原に基づかない不法占有と判断される。
問題の所在(論点)
占有者が特定の賃貸借契約を占有の権原として主張したが、その成立が否定された場合において、当該占有を不法占有として損害賠償責任を認めることができるか。また、これが処分権主義に反しないか。
規範
当事者が特定の法律関係(賃貸借契約等)に基づく占有権原を主張し、従前の主張を撤回してこれに限定した場合、裁判所が当該法律関係の成立を否定したときは、特段の事情がない限り、当該期間の占有は正当な権原を欠く不法占有に該当する。
重要事実
上告人は、昭和26年9月1日以降、本件家屋において料亭を経営し占有していた。上告人は原審において、当該占有は同年8月中に被上告人との間で成立した賃貸借契約に基づくものであると主張し、これに反する従前の主張を撤回した。しかし、原審は当該賃貸借契約の成立を認めなかった。
あてはめ
上告人は自ら賃貸借契約に基づく占有であることを主張し、それ以外の占有権原を示唆する従前の主張を明示的に撤回している。裁判所が審理の結果、主張された賃貸借の成立を否定した以上、上告人が依拠する唯一の権原が失われたことになる。したがって、昭和26年9月1日以降の占有は「正権原に基づかない不法なもの」と評価せざるを得ない。また、被上告人は不法占有による損害賠償を求めており、裁判所の判断は申立ての範囲内である。
結論
上告人の占有は不法占有にあたり、これに基づく損害賠償請求を認めた原判決に違法はない。
実務上の射程
自白や主張の撤回を伴う権原主張において、その主張が排斥された場合に直ちに不法占有となる帰結を示す。答案上は、不法占有に基づく損害賠償請求において、被告側の占有権原の抗弁が理由不十分として排斥される際の論理補強に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)99 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除が権利の濫用に該当するか否かは、賃料受領拒絶や立退要求等の事実のみをもって直ちに判断されるものではなく、諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)が賃貸借契約を解除した事案において、上告人(賃借人)側は、被上告人による賃料受領の拒絶や、不当な立退…