判旨
未成年者の法定代理人が契約の「解除」を申し入れた場合であっても、諸般の事情に照らし、その表示に契約を遡及的に消滅させる趣旨が含まれていると認められるときは、これに「取消し」の意思表示が包含されていると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
未成年者の制限行為能力を理由とする契約の解消において、法定代理人が「取消し」ではなく「解除」という用語を用いて意思表示を行った場合に、民法5条2項に基づく取消しの効力が認められるか。
規範
意思表示の解釈にあたっては、表意者が使用した語句の文言のみに拘泥することなく、その表示に至った経緯、当事者の目的、及び当該表示によって達成しようとする法的な効果を総合的に考慮すべきである。特に、契約を解消して原状回復を求める趣旨が明白であれば、法的な構成として「解除」という言葉が用いられていても、実質的に「取消し」の意思表示を包含していると解することができる。
重要事実
未成年者である被上告人と上告人との間で本件売買契約が締結された。その後、被上告人の法定代理人が上告人に対し、本件売買契約の「解除」を申し入れた。上告側は、これが「解除」であって「取消し」ではないとして、契約解消の効力を争った。
あてはめ
本件において、被上告人の法定代理人は契約の解消を求めて「解除」を申し入れている。この申し入れは、未成年者が行った不利益な契約を是正し、契約関係を終了させることを目的とするものである。このような事情下での解除の申入れは、契約を当初からなかったものとする取消しの意思表示を包含していると解するのが、当事者の真意に合致し、かつ合理的な解釈である。したがって、形式的な文言が「解除」であっても、実質的には取消しの意思表示として有効であると判断される。
結論
契約の解除の申し入れに取消しの意思表示が包含されていると解した原審の判断は正当であり、本件売買契約は有効に解消されたものと認められる。
事件番号: 昭和27(オ)996 / 裁判年月日: 昭和29年12月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】動機の錯誤が法律行為の要素の錯誤となるためには、表意者がその動機を法律行為の主要な内容とする意思を表示したことを要する。本判決は、この表示された動機がなければ一般取引通念上も意思表示をしなかったといえる場合には、民法95条本文(改正前)の「要素の錯誤」に当たるとした。 第1 事案の概要:被上告人(…
実務上の射程
答案上では、制限行為能力者による取消しや、無権代理行為の追認拒絶などにおいて、表意者が法的な専門知識を欠くために正確な法律用語を使用していない場面で、「意思表示の解釈」の論理として活用できる。用語の誤用があっても、その実質的な目的が法的要件を満たしていれば、当該法律効果を認めることができるとする解釈指針となる。
事件番号: 昭和28(オ)441 / 裁判年月日: 昭和31年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権の設定を承諾したにもかかわらず、相手方の欺罔行為によって売買を原因とする所有権移転登記がなされた場合、その売買契約は錯誤により無効(現行法上の取消し)となる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人A(被告)に対する債務の担保として、本件建物につき抵当権を設定することを承諾した。しかし…
事件番号: 昭和38(オ)936 / 裁判年月日: 昭和40年11月25日 / 結論: 破棄差戻
手附倍戻しにより売買契約が解除されて終了したと主張して右売買契約が存在しないことの確認を求める訴は、文言どおり解すれば、過去の法律関係の確認を求めるのと異なるところがないが、右売買契約が解除された結果生ずべき現在の権利または法律関係について直接に確認または給付を求める趣旨が窺えないでもないから、原審としては、右請求につ…
事件番号: 昭和36(オ)1090 / 裁判年月日: 昭和38年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停による合意において、訴訟終了の合意と新たな売買契約が併存する場合、当事者が売買契約の解除が訴訟終了の効果に影響を及ぼさない趣旨で合意したときは、売買契約の不履行により解除されても訴訟終了の効果は維持される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人は、土地所有権をめぐる訴訟において調停を成立させた。…