手附倍戻しにより売買契約が解除されて終了したと主張して右売買契約が存在しないことの確認を求める訴は、文言どおり解すれば、過去の法律関係の確認を求めるのと異なるところがないが、右売買契約が解除された結果生ずべき現在の権利または法律関係について直接に確認または給付を求める趣旨が窺えないでもないから、原審としては、右請求につきいかなる理由で確認の利益を認めたかを明らかにするか、これを認め得ないのであれば、原告が現在の権利または法律関係についていかなる請求をなすものであるか、その訴旨を釈明して審理すべきである。
確認の利益の有無につき審理不尽の違法があるとされた事例
民訴法225条,民訴法395条1項6号
判旨
確認の訴えは、特段の規定がない限り、現在の権利又は法律関係の確認を求めるものでなければならず、単に過去の法律関係の確認を求めることは、即時確定の利益を欠き許されない。ただし、訴訟の趣旨が現在の権利関係の確認にあると窺える場合は、裁判所は釈明権を行使して訴えの趣旨を明らかにすべきである。
問題の所在(論点)
「売買契約が存在しないこと」の確認を求める訴えが、単なる過去の法律関係(解除の事実)の確認にすぎないのではないか。また、このような訴えについて確認の利益を認めるために裁判所が尽くすべき職務は何か(確認の訴えの対象と釈明権の行使)。
規範
確認の訴えが適法であるためには、対象が「現在の権利又は法律関係」であり、かつ「即時確定の利益」が認められなければならない。過去の法律関係の確認は、原則として確認の利益を欠くため許されないが、それが現在の権利関係の紛争解決に直結し、訴訟上の趣旨として現在の権利関係を対象としていると解し得る場合には、釈明によって対象を特定させるべきである。
重要事実
被上告人らは、上告人との間で締結された土地売買契約について、手付倍戻しにより解除され終了したと主張し、当該売買契約が「存在しないこと」の確認を求めて提訴した。原審は、この請求に対して確認の利益があることを前提として認容判決を下したが、上告人がこれを不服として上告した。
事件番号: 昭和27(オ)191 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の不存在という単なる事実の確認を求める訴えは、書面成立の真否等の明文がある場合を除き適法ではないが、これを所有権の帰属という法律関係の確認を求める趣旨と解釈して審理することは許される。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、被上告人(被告)に対し、本件不動産につき売買契約が存在しないことの確…
あてはめ
本件請求は、文言上は解除により効力を失ったという「過去の法律関係」の確認を求めるものと異ならず、即時確定の利益を見出し難い。本来であれば、解除の結果として生じる「現在の権利関係」(例えば土地所有権や返還請求権の存否)の確認や給付を求めるべきである。しかし、被上告人の主張全体を照らせば、現在の権利関係の確認を求めている趣旨とも窺えるため、裁判所は直ちに却下するのではなく、釈明権を行使して訴えの趣旨を明確にさせるべきであった。
結論
確認の利益を認める理由を明らかにするか、釈明権を行使して現在の権利関係に関する請求に改めさせることなく、直ちに確認の利益を認めた原判決には違法がある。よって原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
確認の訴えの対象が「過去の法律関係」である場合、原則として不適法となるが、答案上は「現在の紛争を解決するための有効適切な手段といえるか」という観点から、現在の権利関係への引き直しが可能かを検討する際に本判例の趣旨を用いる。特に、文言上過去の事実を捉えているような請求に対し、裁判所の釈明義務を論じる際にも重要となる。
事件番号: 昭和36(オ)954 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
当事者の申立、主張等に矛盾する点があるとか、不明確な点があるなど特別の事情のないかぎり、裁判所は、必ずしも、釈明権を行使する職責を負うものではない。
事件番号: 昭和33(オ)609 / 裁判年月日: 昭和35年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本訴において所有権取得の経過的事実として主張され相手方が認めた事実は、反訴における占有権原として当然に主張されたものとはみなされない。占有権原の抗弁について格別の主張・立証がない限り、弁論主義に反することなく明渡請求を認容できる。 第1 事案の概要:上告人(本訴原告・反訴被告)は、被上告人(本訴被…
事件番号: 昭和39(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和40年11月16日 / 結論: 棄却
売買契約解除の場合に割賦支払済代金は売主において没収する特約があつたとの原告主張を被告が否認する旨主張しているからといつて、原告の原状回復請求に対し、支払済代金の返還をもつて同時履行の抗弁を提出したものとは解されない。
事件番号: 昭和24(オ)137 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 破棄差戻
家屋の賃貸人が若年の婦女の身で母を顧みなければならず、当該家屋に住んで何か商業を営む外生活を立てる道がないという解約申入事由は、借家人側にこれに打ち勝つべき格段の具体的利害関係がないかぎり、一応借家法第一条の二にいわゆる正当の事由となり得べきものである。