判旨
売買契約の不存在という単なる事実の確認を求める訴えは、書面成立の真否等の明文がある場合を除き適法ではないが、これを所有権の帰属という法律関係の確認を求める趣旨と解釈して審理することは許される。
問題の所在(論点)
売買契約という「事実」の不存在確認を求める訴えを、不動産の所有権という「法律関係」の確認を求める趣旨として解釈し、審理・判断することは可能か。
規範
確認の訴えの対象は、原則として現在の特定の法律関係に限られ、単なる事実の存否の確認を求める訴えは、書面成立の真否(民事訴訟法134条)のような特段の明文規定がない限り、適法な訴えとして認められない。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人(被告)に対し、本件不動産につき売買契約が存在しないことの確認を求めて提訴した。これに対し原審(控訴審)は、本件訴えを「本件不動産の所有権が上告人にあり、被上告人にはないこと」の確認を求める法律関係の確認請求であると解釈した上で、所有権は被上告人にあると判定して上告人の請求を排斥した。上告人は、これが当事者の申し立てていない事項についての裁判であるとして上告した。
あてはめ
上告人が主張する売買契約の不存在は、それ自体では単なる事実の存否に関するものである。しかし、これをそのまま却下するのではなく、当事者の紛争解決の目的に照らせば、契約の成否によって左右される「不動産の所有権」の帰属という法律関係の確認を求めた趣旨であると解するのが相当である。原審がそのように解釈して所有権の存否を判断したことは、当事者の合理的な意思に合致しており、処分権主義に違反して申し立てのない事項を裁判したものとはいえない。
結論
本件訴えを法律関係の確認請求と解釈して判断した原審の措置は適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(オ)936 / 裁判年月日: 昭和40年11月25日 / 結論: 破棄差戻
手附倍戻しにより売買契約が解除されて終了したと主張して右売買契約が存在しないことの確認を求める訴は、文言どおり解すれば、過去の法律関係の確認を求めるのと異なるところがないが、右売買契約が解除された結果生ずべき現在の権利または法律関係について直接に確認または給付を求める趣旨が窺えないでもないから、原審としては、右請求につ…
本判決は、事実の確認を求める訴えの不適法性を示すとともに、裁判所による訴えの趣旨の合理的な解釈(釈明権の行使や訴訟指揮に関連)の許容範囲を示している。答案上は、訴えの対象が不適切な場合に、紛争の解決に資する法律関係の確認へと読み替えて審理を継続できる根拠として引用し得る。
事件番号: 昭和29(オ)225 / 裁判年月日: 昭和31年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買の予約成立と予約完結権の行使は別個の概念であり、それらを混同して判決の不備を主張することは、上告理由となる重要な法令解釈の主張には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原審における事実認定を非難するとともに、売買予約の成立と予約完結権の行使を混同した独自の解釈に基づき、原判決には理由の齟齬…
事件番号: 昭和25(オ)429 / 裁判年月日: 昭和27年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の規定に該当せず、法令の解釈に関する重要な主張も含まれない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が提起した本件上告について、その論旨が上記特例法に定める各号の事由(憲法違反や重要な法令解釈の齟齬等)に該当するか、あるいは法令解釈に関…
事件番号: 昭和33(オ)609 / 裁判年月日: 昭和35年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本訴において所有権取得の経過的事実として主張され相手方が認めた事実は、反訴における占有権原として当然に主張されたものとはみなされない。占有権原の抗弁について格別の主張・立証がない限り、弁論主義に反することなく明渡請求を認容できる。 第1 事案の概要:上告人(本訴原告・反訴被告)は、被上告人(本訴被…
事件番号: 昭和24(オ)137 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 破棄差戻
家屋の賃貸人が若年の婦女の身で母を顧みなければならず、当該家屋に住んで何か商業を営む外生活を立てる道がないという解約申入事由は、借家人側にこれに打ち勝つべき格段の具体的利害関係がないかぎり、一応借家法第一条の二にいわゆる正当の事由となり得べきものである。