判旨
帰属不明の潜在無効投票がある場合、各候補者の有効投票数の計算は、公職選挙法209条の2に基づき、各候補者の得票数に応じて当該無効投票数を按分して差し引くべきである。
問題の所在(論点)
帰属不明の潜在無効投票が存在する場合、特定の候補者の得票から一律に差し引くべきか、それとも各候補者の得票数に応じて按分計算を行うべきか。また、訴訟継続中の法改正を適用すべきか。
規範
公職選挙法209条の2(当時)によれば、帰属不明の潜在無効投票が判明したときは、各候補者の有効投票の計算において、開票区ごとに各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分し、得た数をそれぞれ差し引くものとする。また、同法改正附則により、この規定は現に係属している訴訟についても適用される。
重要事実
昭和26年の町議会議員選挙において、上告人Aは96票で当選し、訴外Eは95票で次点落選した。Eが当選無効を求めて提起した訴願に対し、裁決庁は「自筆によらない無効投票(潜在無効投票)」が3票あると認定し、これをすべてAの得票から控除した結果、Aの得票がEを下回るとしてAの当選を無効とした。Aがこの裁決の取消しを求めて提訴したところ、原審も同様の計算で請求を棄却したが、上告審継続中に計算方法に関する公職選挙法の改正が行われた。
あてはめ
判明した3票の無効投票は誰の得票に含まれていたか不明な潜在無効投票である。公職選挙法209条の2の按分規定を適用すると、A・F・Gの当選者3名および落選者Eの得票数に応じて3票を按分して差し引くことになる。この計算方法を用いた場合、Aの得票数から差し引かれる数は限定的であり、計算上、Aの得票数が首位落選者Eの得票数を上回ることは明白である。したがって、Aの得票がEを下回るとした原判決の判断は、現行法の規定に照らし違法である。
結論
上告人の当選を無効とした裁決は、按分計算を定めた法の規定に反し違法である。よって、原判決を破棄し、当選を無効とした裁決を取り消す。
事件番号: 昭和27(オ)692 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】帰属不明の無効投票が混入している場合、改正公職選挙法に基づき、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分して差し引いた上で当選の効力を判断すべきである。 第1 事案の概要:昭和26年4月に実施された青森県北津軽郡D議会議員一般選挙において、投票中に25票の「潜在的無効投票(帰…
実務上の射程
選挙無効・当選無効訴訟において、誰の得票か特定できない無効票(潜在無効票)が見つかった際の処理基準を示す。司法試験では、選挙の効力に関する計算問題や、訴訟継続中の法改正の適用(附則の解釈)が問われた際の参考となる。
事件番号: 昭和27(オ)247 / 裁判年月日: 昭和30年2月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】公職選挙法209条の2に基づき、帰属不明の潜在無効投票がある場合には、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分し、それぞれ差し引いて有効投票数を算出すべきである。 第1 事案の概要:町村議会議員選挙において、選挙権を有しない者による無効投票が17票存在し、それらが有効投票に…
事件番号: 昭和27(オ)189 / 裁判年月日: 昭和28年2月10日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】潜在的無効投票がある場合、公職選挙法209条の2の規定に基づき、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分して差し引くべきである。改正法の附則により、このルールは施行時に現に係属している訴訟にも適用される。 第1 事案の概要:昭和26年4月の青森県西津軽郡議員選挙において、1…
事件番号: 昭和28(オ)1286 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙の投票において、特定の候補者の氏名が正確に記載されていない場合であっても、諸般の事情を考慮して当該候補者に対する投票であると合理的に認められるときは、これを有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:本件は選挙における投票の効力が争われた事案である。係争の投票6票について、特定の候補者Bの氏…