判旨
自作農創設特別措置法に基づく買収計画において、昭和20年11月23日現在の所有関係を基準とする遡及買収を行う場合、同日以降に同居親族間で行われた所有権移転は、実質的な所有者の変動があった場合に準じて判断されるべきである。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法による遡及買収において、昭和20年11月23日以降に行われた同居親族間の所有権移転がある場合、当該移転をどのように評価して買収計画の適否を判断すべきか。
規範
自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、昭和20年11月23日現在の状況を基準とする遡及買収がなされる場合、同日以降に所有権の移転があったとしても、それが同居の親族間で行われたものであるときは、当該移転が実質的な所有者の変動を伴わない形式的なもの(あるいは法の潜脱を目的とするもの)であれば、本来の所有者の変動があった場合に準じて(買収の可否を)判断すべきである。
重要事実
上告人A1は、所有する農地等(本件土地)を、昭和20年11月23日より後に親族であるA2またはA3へ所有権移転した。A3は同日現在、A1およびA2と同一家屋に居住していた(後に別居)。国は同法15条に基づき、当該土地を昭和20年11月23日現在の所有状況に遡って買収する計画を立てたが、上告人らはこの買収計画の適法性を争った。なお、以前に別理由で取り消された現実買収の計画とは別に、今回の遡及買収計画が樹立されたという経緯がある。
あてはめ
原審が認定した事実によれば、本件の所有権移転はA1から同居親族であるA2、A3に対してなされたものである。このような親族間かつ同居人への移転は、昭和20年11月23日時点の自作農創設という法の趣旨に照らせば、実質的な所有者の変動があった場合に準じて慎重に判断されるべき事情にあたる。本件の買収は、同日現在の状況に基づく遡及買収であり、以前に取り消された現実買収とは時期および理由を異にする別個の計画である。したがって、原審が当該移転を所有者の変動があった場合に準じて考え、買収を正当とした判断は是認できる。
結論
同居親族間での所有権移転がある場合でも、昭和20年11月23日現在の状況を基準とする遡及買収計画は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
戦後の農地改革という特殊な歴史的背景下での判決であるが、公法上の制限を免れるための形式的な権利移転(特に親族間)がなされた場合に、実質的な権利関係や基準時における状態を重視して行政処分の適否を判断する枠組みとして参照し得る。答案上は、遡及的な買収規定の適用において、中間になされた主観的な権利変動が処分の効力を妨げない例として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)828 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法による農地買収は公共の福祉に適合し、その対価は憲法29条3項にいう正当な補償にあたるため、同法に基づく買収処分は合憲である。また、先行する買収処分に重大明白な瑕疵がない限り、それに基づく売渡計画や訴願裁決も適法となる。 第1 事案の概要:農地委員会は、上告人が所有していた農地に…
事件番号: 昭和27(オ)857 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】客観的に買収除外要件に該当する農地について、行政庁が指定等の手続を怠り買収処分を行った場合、当該手続の不備は買収処分の違法事由となり、当該処分に対する不服申立て等を通じて是正を求めることができる。 第1 事案の概要:上告人(行政側)は、自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った。当該農地は…