昭和二〇年一一月二三日当時農地所有者と同居していた親族がその後別居するに至つた場合には、自作農創設特別措置法第六条の二の規定により、同日現在の事実に基いて農地買収計画を定めることができる。
昭和二〇年一一月二三日当時農地所有者と同居していた親族がその後別居するに至つた場合と自作農創設特別措置法第六条の二の規定による遡及買収の許否
自作農創設特別措置法6条の2第1項
判旨
自作農創設特別措置法による遡及買収において、世帯分離により農地の占有・管理状況が実質的に変化した場合には、所有者の変更と同視し得ると解される。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法6条の2に基づく遡及買収において、世帯分離の事実を「所有者の変更」と同視し、買収計画の基礎とすることができるか。また、同条の買収請求権者の範囲をどのように解すべきか。
規範
自作農創設特別措置法3条および6条の2の適用において、形式的な所有権の移転がない場合であっても、世帯の分離等の事実により農地の権利主体や占有状況に実質的な変更が生じたと認められるときは、同条が想定する「所有者の変更」と同様の結果を生じたものとして、買収計画を樹立することが認められる。
重要事実
農地所有者である上告人の二男Dは、昭和20年11月23日時点では上告人と同居していたが、昭和21年秋頃より同一村内で別居するに至った。行政当局は、この世帯分離によって農地の占有・管理状況が変化したと捉え、自作農創設特別措置法6条の2に基づく遡及買収計画を策定した。これに対し上告人は、住所の変更がないこと、および同条所定の小作農による買収請求という先決的要件を欠くことを理由に、当該計画の違法を主張して争った。
あてはめ
本件では、上告人と二男Dが当初同居していたものの、その後に別居した事実が認定されている。この事実は、同法3条の適用上、所有者が変更したことと同様の結果を生じさせたと評価できる。また、当該土地の小作農については、遡及買収の有無に関して利害関係を有しており、同法6条の2がこのような小作農による申請を禁止する趣旨とは解されない。したがって、別居当時の事実に依拠して買収計画を定めた行政判断は正当である。
結論
本件遡及買収計画は適法であり、上告人の主張は採用できない。上告棄却。
実務上の射程
農地改革期における遡及買収の要件を柔軟に解釈した事例である。現代の行政法答案においては、条文の文言を超えて実質的な変化を法的な要件充足とみなす「実質的解釈」の限界を示す一つの資料として、あるいは法律の趣旨に遡った目的論的解釈の例として参照し得る。
事件番号: 昭和27(オ)436 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
同一村内における住所の移転は自作農創設特別措置法第六条の二にいう住所の移転にあたる。
事件番号: 昭和26(オ)367 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づき、土地の耕作者が所有者本人ではなくその家族等である場合において、所有者が不在地主の要件を満たすときは、同法による農地買収は適法である。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の耕作者は上告人本人であり、家族の一員に過ぎない訴外Dとの間に使用貸借関係は生じないため、本件土地…