判旨
自作農創設特別措置法に基づき、土地の耕作者が所有者本人ではなくその家族等である場合において、所有者が不在地主の要件を満たすときは、同法による農地買収は適法である。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む者」の認定、および不在地主に対する農地買収処分の適法性が問題となった。
規範
自作農創設特別措置法(以下「法」という)の趣旨に照らし、農地の「耕作の業務を営む者」が所有者本人か否かは実態に即して判断される。所有者が不在地主に該当し、かつ実質的な耕作者が別に存在する場合には、当該土地は小作地として買収の対象となる。
重要事実
上告人は、本件土地の耕作者は上告人本人であり、家族の一員に過ぎない訴外Dとの間に使用貸借関係は生じないため、本件土地は自作地であると主張した。しかし、原審の認定によれば、当時上告人の住所は東京都にあり、病気治療や修学といった正当な理由なく本籍地を離れていた。また、実質的な耕作者は訴外Dであると認定された。
あてはめ
事実認定において、上告人は病気治療等のやむを得ない事情なく都内に居住しており、不在地主の状態にあった。また、本件土地の実質的な耕作者は上告人ではなく訴外Dであると認められる。このような状況下では、本件土地は上告人の自作地ではなく、法が予定する小作地に該当するため、国による買収処分は法の精神に合致する適正な措置といえる。
結論
上告人は不在地主に該当し、Dが耕作者である以上、本件買収処分は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
農地改革下における「不在地主」の認定と「耕作者」の実質的判断に関する事例。現代の行政法・農地法上の論点としては限定的だが、形式的な権利関係よりも実態的な利用状況を重視して処分の適法性を判断する枠組みとして参照し得る。
事件番号: 昭和27(オ)357 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法(以下「自創法」)による不在地主の農地買収規定は、居住移転の自由を侵害せず、地主間の区別取扱いも憲法に違反しない。また、同法に基づく買収価格の定めも憲法29条3項に反しない。 第1 事案の概要:上告人は、自創法に基づき不在地主として農地を買収されたが、食糧供出の割当や肥料配給が…
事件番号: 昭和27(オ)123 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
昭和二〇年一一月二三日当時農地所有者と同居していた親族がその後別居するに至つた場合には、自作農創設特別措置法第六条の二の規定により、同日現在の事実に基いて農地買収計画を定めることができる。
事件番号: 昭和27(オ)670 / 裁判年月日: 昭和32年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法4条1項の「同居の親族」とは、住居を一にするだけでなく、実質的に生計を同じくする親族を指す。衣食住の生活において相互扶助関係が強く、実質的に同一世帯内にあると認められる場合は、形式上別個の世帯主として扱われていても同居の親族に該当する。 第1 事案の概要:上告人は、農地や山林を…
事件番号: 昭和27(オ)628 / 裁判年月日: 昭和32年2月21日 / 結論: 棄却
農地賃貸借契約上の賃借人が老齢のため、昭和19年以来同居の子に農耕は勿論主食の供出、世帯の切廻し等一切を任せ、自分は多忙の折子の手伝をする程度であつて、この事実を地主も了承していた場合は、右の子は自作農創設特別措置法第六条の二にいわゆる「小作地に就き耕作の業務を営んでいた小作農」にあたる。