自作農創設特別措置法第六条の二第一項の相続人とは、すでに相続をしている者を指し、相続すべき地位にある者を包含しないものと解すべきである。
自作農創設特別措置法第六条の二第一項の相続人の意義。
自作農創設特別措置法6条の2第1項
判旨
自作農創設特別措置法に基づく小作地の遡及買収において、申請適格を有する「相続人」とは、基準日において既に相続を完了している者に限定され、将来相続すべき地位にある者は含まれない。
問題の所在(論点)
自創法6条の2及び6条の4に基づく遡及買収の申請適格者である「相続人」の意義、および申請権限のない者による申請に基づくなされた買収処分の効力が問題となる。
規範
1. 自作農創設特別措置法(以下「自創法」)3条1項の小作地としてなされた買収処分を、裁判所が事後的に同条5号の仮装自作地としての処分と読み替えて維持することは許されない。 2. 遡及買収の申請適格者は、基準日において当該小作地につき耕作の業務を営んでいた小作農またはその「相続人」であることを要する(自創法6条の2、6条の4)。 3. ここにいう「相続人」とは、既に相続をしている者を指し、単に将来相続すべき地位にある者は含まれない。
重要事実
本件土地は、地主EがGに耕作を任せていたものであり、Gは請負契約に基づき耕作に従事する「小作農」とみなされる状態にあった。その後、Gの子であるFが自創法に基づく遡及買収の申請を行い、これに基づき買収処分がなされた。原審は、FがGの子であるという事実のみをもって申請を適格と認め、処分を有効としたが、Gの死亡による相続が既に発生していたか等の事実は十分に確定されていなかった。
あてはめ
原判決は、FがGの子であるという点のみを認定し、Fが申請時に既に相続をしていたのか、あるいはGから代理権を授与されていたのかを検討していない。自創法上の「相続人」は、既に相続を開始している者に限定されるため、単なる推定相続人による申請は適格を欠く。また、処分庁が小作地として買収した処分を、実態が仮装自作地であるからといって有効なものとして維持することは、行政処分の同一性を損なうものであり許されない。
結論
買収申請の適格性を判断するにあたり、申請者が既に相続を完了しているか否か等の審理を尽くさず、漫然と申請を有効として処分を維持した原判決には、審理不尽・理由不備の違法があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
行政処分の適法性の根拠となる基礎事実に重大な誤り(小作地か仮装自作地か)がある場合、処分を維持することはできないという原則を示す。また、法律上の「相続人」の解釈において、相続開始前の地位を含まないことを明示しており、申請資格の厳格な解釈を求める事案で有用である。
事件番号: 昭和26(オ)664 / 裁判年月日: 昭和28年7月3日 / 結論: 破棄差戻
地主の妻が小作人に農地の返還を求め、小作人が替地を要求したところ、地主の妻が「帰つて相談しておこう、或はまたもとのように此の田をあんたに代つて貰うことになるかも知らぬが、とにかく今年は返してくれ」と懇請したので、小作人がこれを承諾して右農地を返還した場合は、右の事実だけでは、右合意解約を、自作農創設特別措置法第六条の二…