農地賃貸借契約上の賃借人が老齢のため、昭和19年以来同居の子に農耕は勿論主食の供出、世帯の切廻し等一切を任せ、自分は多忙の折子の手伝をする程度であつて、この事実を地主も了承していた場合は、右の子は自作農創設特別措置法第六条の二にいわゆる「小作地に就き耕作の業務を営んでいた小作農」にあたる。
農地賃貸借契約上の賃借人の子を自作農創設特別措置法第六条の二にいわゆる「小作地に就き耕作の業務を営んでいた小作農」に該当するものと認めた例
自作農創設特別措置法6条の2第1項
判旨
自作農創設特別措置法6条の2にいう「耕作の業務を営む者」とは、形式的な賃借権者であるか否かに関わらず、地主の了承の下で実質的に耕作を主宰している者を包含する。
問題の所在(論点)
自創法6条の2にいう「耕作の業務を営む者(小作農)」とは、賃貸借契約の名義人(家長)に限られるのか、それとも実質的に耕作を主宰している同居の家族をも含むのか。
規範
自作農創設特別措置法(以下「自創法」)6条の2に規定される、小作地について「耕作の業務を営む者」に該当するか否かは、形式的な家長関係や契約名義のみにとらわれず、当該土地における耕作の実態を誰が主宰しているか、およびその実態を地主が了承しているかという実質的観点から判断すべきである。
重要事実
本件土地の賃貸借契約上の名義人は父Eであったが、Eは老齢であったため、昭和19年以来、本件土地を含む農耕、主食の供出、世帯の切り回し等のいっさいを同居の子Fに任せていた。Eは多忙な折にFの手伝いをする程度であった。本件買収計画の申請人であるFは、当該土地において実際に耕作を主宰しており、地主Dもその実態を了承していた。
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…
あてはめ
本件において、Fは父Eに代わり農耕や世帯管理のいっさいを主導しており、単なる補助者を超えて耕作を実質的に主宰しているといえる。また、地主Dもこの状況を認めていることから、Fと地主との間には実質的な耕作主宰者としての関係が形成されていると解される。したがって、形式的な契約名義人が父Eであっても、実態として耕作の業務を営んでいるのはFであると評価するのが相当である。
結論
Fは自創法6条の2にいう「耕作の業務を営む者」に該当する。したがって、Fを申請人とする買収計画は適法である。
実務上の射程
行政法や農地法上の権利帰属が問題となる場面において、形式的な名義人(戸主等)と実態上の権利行使者が異なる場合、実態を重視して「受益者」や「処分対象者」を確定する際の判断指針となる。特に戦前の家長制度が残る文脈での判示であるが、現代においても実質的支配を重視する解釈手法として参考になる。
事件番号: 昭和27(オ)641 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第四条第一項にいう「同居の親族」とは、農地所有者と住居および生計を同じくするその親族をいい、生計を同じくするとは、農地所有者とその親族との間に、生計上相互にもしくは一方が他方に依存する関係がある場合を指すものと解すべきである。 二 親子の間柄として本来生計上依存関係の強い父とその二男(当時なお独…
事件番号: 昭和27(オ)670 / 裁判年月日: 昭和32年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法4条1項の「同居の親族」とは、住居を一にするだけでなく、実質的に生計を同じくする親族を指す。衣食住の生活において相互扶助関係が強く、実質的に同一世帯内にあると認められる場合は、形式上別個の世帯主として扱われていても同居の親族に該当する。 第1 事案の概要:上告人は、農地や山林を…
事件番号: 昭和28(オ)1358 / 裁判年月日: 昭和30年7月15日 / 結論: 棄却
農地所有者間で交換的に相手方所有農地を耕作している場合、右農地は小作地である。
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…