一 自作農創設特別措置法第四条第一項にいう「同居の親族」とは、農地所有者と住居および生計を同じくするその親族をいい、生計を同じくするとは、農地所有者とその親族との間に、生計上相互にもしくは一方が他方に依存する関係がある場合を指すものと解すべきである。 二 親子の間柄として本来生計上依存関係の強い父とその二男(当時なお独身中)とが同一家屋において起居、食事を共にしている以上、他に右二男が独自の責任において生計費を分担していたものと認むべき事実のないかぎり、たとえ右二男が県知事の許可を得て父からその所有農地の贈与を受けて分家の手続を了していた事実、同人が従来父とは別個に農作物を供出し諸物資の配給を受け諸税を負担していた事実等があつても、右二男は、なお父との間の生計上の依存関係から脱却していなかつたもの、すなわち父と同居の関係にあつたものと認むべきである。
一 自作農創設特別措置法第四条第一項にいう「同居の親族」の意義 二 自作農創設特別措置法第四条第一項にいう「同居の親族」に該当する者と認むべき場合の一事例
自作農創設特別措置法4条1項
判旨
自作農創設特別措置法4条1項の「同居の親族」とは、農地所有者と住居および生計を同じくする親族を指し、「生計を同じくする」とは、生計上相互にまたは一方が他方に依存する関係にある場合をいう。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法4条1項にいう「同居の親族」の意義、および「生計を同じくする」ことの判断基準が問題となる。
規範
「同居の親族」とは、農地所有者と住居および生計を同じくする親族をいう。ここで「生計を同じくする」とは、農地所有者とその親族との間に、生計上相互に、あるいは一方が他方に依存する関係がある場合を指す。
重要事実
上告人は、農地所有者であるDの二男であり、Dと同一家屋に起居し、食事を共にしていた。上告人は独身の青年であり、独自の責任において生計費を分担していたと認めるに足りる証拠はなく、一方でDとは別個に農作物の供出し、諸物資の配給を受け、諸税を負担していたという事情があった。
事件番号: 昭和27(オ)670 / 裁判年月日: 昭和32年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法4条1項の「同居の親族」とは、住居を一にするだけでなく、実質的に生計を同じくする親族を指す。衣食住の生活において相互扶助関係が強く、実質的に同一世帯内にあると認められる場合は、形式上別個の世帯主として扱われていても同居の親族に該当する。 第1 事案の概要:上告人は、農地や山林を…
あてはめ
上告人は、農地所有者である父Dと同一の家屋で寝食を共にしており、住居を同じくしている。また、独身の青年であり、自ら生計費を分担していた事実も認められない。そうすると、本来生計上の依存関係が強い親子という間柄において、上告人はDとの間の依存関係から脱却していたとはいえず、生計を共同にしていたと評価できる。農作物の個別供出等の事情は、右の依存関係を否定するに足りる独立性を示すものとはいえない。
結論
上告人はDの「同居の親族」に該当する。したがって、上告人がDの同居の親族にあたるとした原審の判断は正当である。
実務上の射程
本判決は農地法関連の規定に関するものであるが、そこで示された「生計を同じくする」の定義(生計上の相互依存関係)は、他の行政法規や民法上の「親族」概念、あるいは税法上の扶養関係等の解釈においても、生活実態に即した判断枠組みとして参照し得る。
事件番号: 昭和27(オ)628 / 裁判年月日: 昭和32年2月21日 / 結論: 棄却
農地賃貸借契約上の賃借人が老齢のため、昭和19年以来同居の子に農耕は勿論主食の供出、世帯の切廻し等一切を任せ、自分は多忙の折子の手伝をする程度であつて、この事実を地主も了承していた場合は、右の子は自作農創設特別措置法第六条の二にいわゆる「小作地に就き耕作の業務を営んでいた小作農」にあたる。
事件番号: 昭和30(オ)707 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法4条にいう「同居の親族」の該否は、親族関係及び同居の事実の有無により決せられ、同居に至る理由や権利取得の原因が家督相続である等の事情は、同条の適用を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人と訴外Dは親族関係にあり、かつ同居していた。行政庁は、両名が同法4条の「同居の親族」…
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…
事件番号: 昭和27(オ)131 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく建物の買収には、明文の規定がなくとも、当該建物が売渡農地の利用上必要であることを要する。 第1 事案の概要:訴外Dは、本件建物に10年以上居住し農業を続けていた。その後、自作農創設特別措置法に基づき、わずか3畝10余歩の農地の売渡しを受けた。これに附帯して…