法律上の権原なく事実上農地を耕作しているに過ぎない者は農業委員会法第八条第一項にいう「耕作の業務を営む者」に含まれない。
法律上の権原なく事実上農地を耕作している者の農業委員会委員の選挙権の有無
農業委員会法8条1項,農業委員会法8条2項,農業委員会法8条3項
判旨
農業委員会委員の選挙権等の資格要件である「農地につき耕作の業務を営む者」とは、単に事実上耕作を行っているだけでは足りず、法令に違反せず法律上の正当な権原に基づいて耕作を行う者を指す。
問題の所在(論点)
農業委員会法8条1項に規定される「一反歩以上の農地につき耕作の業務を営む者」という選挙権等の資格要件について、法律上の耕作権原を有しないが事実上の耕作を行っている者が含まれるか。
規範
農業委員会委員の選挙権および被選挙権は公法上の重要な権利である。そのため、その資格要件としての「耕作の業務を営む者」(農業委員会法8条1項)は、たとえ事実上所定の農地を耕作していても、その耕作が法令に違反し、法律上の権原がない者までをも含むと解することは許されない。
重要事実
補助参加人およびその妻は、事実上判示農地を耕作していた。しかし、当該農地は自作農創設特別措置法により買収され、第三者Dに売り渡されたことで、補助参加人らの従来の耕作権は消滅していた。その後、Dは補助参加人らに引き続き耕作することを許容したが、農地調整法4条に基づく知事の許可は得ていなかった。この事実上の耕作面積を除くと、補助参加人らが権原に基づき耕作する面積は1反歩(約10アール)に満たない状況であった。
あてはめ
補助参加人らは、Dとの間で農地の使用について合意があったとしても、農地調整法4条所定の知事の許可を得ていない以上、有効な賃貸借契約の成立は認められない。したがって、他に特段の事情がない限り、補助参加人らは当該農地を法律上耕作し得る権利を有する者とはいえない。法令に違反し権原なく行われる事実に過ぎない耕作面積を算入することはできないため、法所定の「一反歩以上」という面積要件を充足しないと判断される。
結論
事実上耕作を行っていても、法律上の権原を有しない者は農業委員会法8条1項の「耕作の業務を営む者」に該当しない。
実務上の射程
行政法上の資格要件や公法上の権利行使の前提となる「事実」の解釈において、単なる事実状態のみならず、その状態の適法性や法的権原の有無が厳格に要求されることを示す。特に農地法制のような規制法規が介在する場面では、私法上の合意だけでなく行政上の許可の有無が公法上の資格に直結することを明確にしている。
事件番号: 昭和27(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の賃借権譲渡につき地方長官の許可や農業委員会の承認がない場合であっても、地主が当該譲渡を承諾している限り、自作農創設特別措置法上の小作地にあたると解するのが相当である。したがって、当該譲受人は、同法に基づき当該農地の遡及買収を申請する適格を有する。 第1 事案の概要:D農業委員会は、不在地主E…