判旨
行政庁による離作の要求が、単に農地の売渡しを円滑に行うための勧告としての性質を有する場合には、法律的効果を生じない事実行為にすぎず、行政処分には当たらない。
問題の所在(論点)
行政庁による「離作の要求」が、国民の権利義務に直接影響を及ぼす行政処分に該当するか、あるいは法律的効果を生じない単なる事実行為(勧告)にすぎないか。
規範
行政事件訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政処分)とは、行政庁の行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。単なる事実行為としての勧告や指導は、法律的効果を伴わないため、行政処分には該当しない。
重要事実
農地委員会(被上告人)が、本件土地の耕作者である上告人に対し、昭和25年2月22日に離作を要求した。上告人はこの離作要求の無効確認等を求めて出訴したが、当該要求は農地の売渡しを円滑に進めるための事実行為としての勧告であるかが争点となった。
あてはめ
本件における離作の要求は、農地委員会が農地の売渡しを円滑に行うために行ったものである。これは、相手方に対して特定の行為を促す性質のものではあるが、それ自体によって上告人の耕作権等の法的地位を直接変更させる法律的効果を生じさせるものではない。したがって、当該要求は法律的効果を生じない単なる事実行為としての勧告にすぎないと評価される。
結論
本件離作要求は行政処分ないしこれに準ずる行政行為には当たらないため、無効確認の対象とはならない。
実務上の射程
行政指導(事実行為)と行政処分の区別に関する古典的な判例である。法律上の根拠に基づき一方的に法的地位を変動させる行為(処分)に対し、協力や配慮を求めるに留まる行為(事実行為)は処分性を欠くという基本原則を、実務や答案上において確認するために用いられる。
事件番号: 昭和27(オ)575 / 裁判年月日: 昭和29年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借または転貸借に基づき農地を適法に占有耕作している事実に加え、行政処分である買収処分が正規の手続を経てなされた場合には、当該処分は有効であり、不法占拠等の瑕疵は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人(Bを除く)らが判示農地を占有耕作していることに関し、農地買収処分の無効等を主張し…
事件番号: 昭和40(行ツ)17 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
農地の所有者から賃借権等の設定を受け現に当該農地を耕作している者であつても、右賃借権等の設定について農業委員会の許可を受けていない以上、当該農地の所有権移転につき知事が第三者に与えた許可処分の無効確認を求める原告適格を有しない。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…