判旨
法人の代表者の代表権が消滅しても、これを相手方に通知しない限り、旧代表者の代表権は依然存続するものとしてなされた訴訟手続は適法である。
問題の所在(論点)
法人の代表者が退任して代表権を失った場合において、相手方への通知がないまま旧代表者を代表として進められた訴訟手続の効力が、民事訴訟法上の代理権消滅の不通知(現行民訴法36条1項、37条)の規定に基づきどのように解されるか。
規範
法人の代表者の代表権の消滅は、相手方に対してその旨を通知しなければその効力を生じない。したがって、通知がなされない限り、当該代表者の代表権は依然として存続するものとみなされ、これに基づいてなされた訴訟行為は有効に成立する。
重要事実
上告会社(法人)の代表者Dは、第一審の訴訟係属中に取締役を辞任し、法律上の代表権を失った。しかし、上告会社側から相手方に対し、代表権が消滅した事実を通知したことは記録上認められなかった。その後、Dを代表者として原審(控訴審)の訴訟手続が進められたため、上告人は当該手続が代表権のない者によって行われた違法なものであると主張した。
あてはめ
本件において、代表者Dの代表権消滅(取締役辞任)は生じているが、相手方への通知がなされていない。旧民訴法58条・57条(現行36条1項・37条)を適用すると、相手方への通知がない以上、対外的な関係では代表権が存続しているものと扱われる。したがって、通知を欠いたままDを代表者としてなされた原審の訴訟手続に違法はないと評価される。
結論
代表権消滅の通知を欠く以上、旧代表者を代表者として行われた訴訟手続は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
法人の代表権消滅時の不通知の効力に関する基本判例である。現行法下でも民訴法37条により法定代理(代表)に準用される36条1項の解釈として機能する。答案上は、訴訟代理権(または代表権)の消滅を相手方が主張して訴訟手続の無効を訴えた場合に、通知の有無を要件として手続の安定性を肯定する論拠として使用できる。
事件番号: 昭和34(オ)867 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】名義貸人の責任(旧商法23条、現行商法14条)が認められるためには、名義貸人が自己の氏名または商号の使用を許諾または黙認した事実が必要であり、その事実が認められない場合には責任を負わない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dが土木建築請負業を営むにあたり、被上告人の商号である「E」を使用していたこ…