建築請負を業務とする株式会社が事実上の連絡のため某出張所を開設し、甲がその出張所長と称し、同出張所名義をもつて、同出張所の独立会計により、他と請負契約をなした場合にかかる事例が既往に二、三あり、会社もその事実を諒知していたときは、会社は甲に自己の商号を使用して営業をなすことを許諾したものとみとめるべきである。
商法第二三条の責任が認められた一事例
商法23条
判旨
商号借用者が名義貸与者の商号を使用して営業を行うことを、名義貸与者が事実として認識しつつ黙認していた場合には、名義貸与者の商号を使用した営業が許諾されていたものと認められる。
問題の所在(論点)
商号借用者Dが、名義貸与者である株式会社A組の出張所名義を用いて営業活動を行っていた場合において、名義貸与者がその事実を認識しながら放置していたことが、商法第14条(現行第9条)の「許諾」に該当するか。
規範
商法第14条(現行第9条)の「自己の氏名、商号を使用して営業をなすことを許諾した」とは、明示的な許諾のみならず、他人が自己の商号を使用して営業を行う事実を認識しつつ、これを黙認している場合などの黙示の許諾も含まれる。
重要事実
上告人会社(株式会社A組)は宮崎出張所を開設し、同出張所と連絡事務を取り扱っていた。同出張所の所長名義を使用していたDは、A組宮崎出張所の名義で、上告人会社の事業内容と同じ土木建築請負業に属する工事請負契約を締結していた。かかる取引事例は過去に複数回存在し、上告人会社もその事実を諒知していたという事情があった。
あてはめ
Dは上告人会社の出張所長名義および出張所名義を使用して、上告人会社の営業範囲内の契約を締結していた。上告人会社は、同出張所との間で連絡事務を行っており、かつDが当該名義を用いて同種営業を行っている事実を具体的に認識(諒知)していた。このような事実関係のもとでは、名義の使用について上告人会社による黙示の承認があったといえ、商号を使用して営業をなすことを許諾したものと評価される。
結論
上告人会社はDに自己の商号を使用して営業をなすことを許諾したものと認められ、名義貸与者としての責任を免れない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
名義貸与者の責任が認められるための「許諾」の範囲を、黙示の態様にまで広げた事例である。答案上では、名義貸与者が他人の営業事実を知りながら異議を述べずに放置していた(積極的な放置)という事実を摘示し、「黙示の許諾」を認定する際の根拠として活用すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)618 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が無権代理人に対して代理権を授与した事実はなく、かつ、無権代理人が本人の駐勤所等の肩書を付した名刺を使用することを承諾した等の事情も認められない場合には、表見代理は成立せず、本人は売買契約の責任を負わない。 第1 事案の概要:上告人(買主)とDとの間で木材の売買契約が締結されたが、Dは被上告会…