判旨
自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した者は、当該営業が自己の営業であると誤信して取引をした相手方に対し、当該取引によって生じた債務について弁済の責任を負う。
問題の所在(論点)
自己の商号を他人に使用させた者が、その他人の営業上の取引によって生じた債務について、名義貸与者として責任を負うか。特に、商号使用の許諾と相手方の誤信がある場合の責任の成否が問題となる。
規範
自己の商号を使用して営業をなすことを他人に許諾した者は、自己を営業主と誤認して取引した第三者に対し、名義貸与者としての責任(商法14条、会社法9条参照)を負う。本責任の成立には、(1)商号使用の許諾、(2)相手方の誤認(善意・無過失)が必要である。
重要事実
上告人は、京都府知事から「E」という商号による医薬品販売の許可登録を受けていた。上告人は、訴外Dに対し、自己の許諾の下で当該商号「E」を用いて医薬品販売業を営むことを認めていた。被上告人は、当該営業が上告人のものであると誤信して、Dとの間で医薬品の取引(本件取引)を行った。
あてはめ
上告人は、Dに対し「E」という商号を使用して営業を行うことを許諾しており、名義貸与の事実に争いはない。また、被上告人は当該営業の主体が上告人であると誤信して本件取引を行っている。このように、自己の商号使用を許諾した外観が存在し、相手方がその外観を信頼して取引に入った以上、禁反言の法理に基づき、上告人はDが負った代金債務について営業主と同様の責任を負うべきである。
結論
上告人は本件代金債務につき責を負う。したがって、上告人の上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
商法14条(会社法9条)の名義貸与者の責任に関するリーディングケース。判決文では条文への直接の言及はないが、実務・答案上は同条の規範として定着している。相手方の「誤信」の程度については、一般に重大な過失がないことを要すると解される。
事件番号: 昭和34(オ)27 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
「ローヤル」という商号を用い毛布、洋服生地販売商を営む甲が、乙に右営業店舗内の一部を貸し与え、「ローヤル商会」或いは「ローヤル商会卸部」という類似商号を使用して洋服生地の卸売をすることを終始許諾してきた等原審認定の事実関係のもとでは、乙と取引した丙が乙の営業を甲の営業の一部であると誤認したことは、已むを得ないところであ…