民法上の組合において組合規約等で業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は善意無過失の第三者に対抗できないものと解するのが相当である。
民法上の組合の業務執行者の代理権限の制度と第三者に対する対抗力。
民法670条
判旨
民法上の組合において選任された業務執行者は、組合の事業の範囲内において第三者に対し組合員全員を代表する権限を有し、規約による制限は善意無過失の第三者に対抗できない。
問題の所在(論点)
民法上の組合の業務執行者が、組合規約等による代理権の制限に違反して第三者と取引した場合において、組合員全員がその責任を負うか。また、その制限を第三者に対抗できるか。
規範
民法上の組合において、規約等により特に業務執行者を定めた場合には、特段の事情がない限り、当該業務執行者は組合の内部事務を処理するのみならず、組合の事業の範囲内において第三者に対し組合員全員を代表する権限を有する。また、組合規約等によるこの代表権の内部的な制限は、善意かつ無過失の第三者に対抗することができない。
重要事実
定置漁業を経営する目的で組織された民法上の組合において、組合長Eが業務執行に当たっていた。組合規約では、借入金の最高限度額等の決定には総会の議決を要する旨の制限があったが、Eは総会議決を経ずに、組合を代表して被上告人との間で漁業用資材の取引を行った。被上告人は、組合員の一部が不同意であることや、Eが規約に違反して取引していることを知らず、かつこれに過失もなかった。
あてはめ
本件組合長Eは、組合員らから業務執行者として選任されており、原則として組合員全員を代表する権限を有する。本件取引は、定置漁業という組合の事業の範囲内で行われたものである。また、規約上の総会議決要件は代表権に対する内部的な制限にすぎないところ、相手方である被上告人は、Eの規約違背について善意かつ無過失であった。したがって、組合員側はこの制限を被上告人に対抗することはできない。
結論
業務執行者が代表権の制限に違反して行った取引であっても、相手方が善意無過失であれば、当該取引による債務について全組合員が責任を負う。
実務上の射程
本判決は、民法上の組合の代表権およびその制限の対抗要件を確立した重要判例である。答案上は、組合の業務執行者が行った行為の帰属が問題となる場面で、まず業務執行者の代表権(代理権)を認定し、次いで内部的制限がある場合に、民法110条等の表見代理の規定を類推適用するのではなく、本判決の法理(善意無過失の第三者への対抗不可)を直接用いて処理することが一般的である。
事件番号: 昭和31(オ)859 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
民法上の組合において組合契約その他により業務執行組合員が定められていない場合、組合員の過半数のものは、共同して右組合を代理する権限を有するものと解すべきである。