判旨
権利能力なき社団において、社団自体が債務を負担する場合であっても、特段の事情がない限り、各構成員(組合員)は社団の債権者に対して直接に債務の履行義務を負う。
問題の所在(論点)
権利能力なき社団の構成員は、社団が負った債務について、個人として直接に履行責任を負うか。社団自体の責任と構成員の個人責任の関係が問題となる。
規範
権利能力なき社団(人格のない社団)の実体を有する組織において、その活動から生じた債務については、社団財産が責任を負うのみならず、構成員個人もまた社団の債務について直接に責任を負うものと解するのが相当である。
重要事実
三陸定置漁業組合は、独自の組織と財産を有し、特定の事業運営を行っている人格のない社団としての実体を有していた。同組合の組合長であるDが、特定の浜での漁業経営を行うことについて、組合員全員の黙示の承諾を得て事業を遂行していたところ、当該事業に関連して生じた債務について、債権者が組合員個人に対して履行を求めた。
あてはめ
本件組合は人格のない社団としての組織・財産・事業実体を有している。組合長が行った漁業経営は組合員全員の黙示の承諾に基づく組合の事業といえる。権利能力なき社団の債務は、構成員全員に帰属する性質を有するため、社団自体が履行責任を負うか否かにかかわらず、債権者は構成員に対して直接履行を請求できると解される。したがって、本件組合の債権者が組合員個人に対して債務の履行を請求することは正当である。
結論
人格のない社団の債権者は、構成員(組合員)に対し、社団の債務について直接にその履行を請求することができる。
実務上の射程
権利能力なき社団の債務について、構成員の有限責任を否定し、直接・無限責任を認めた判例として位置づけられる。ただし、その後の判例(最判昭48・10・9等)では、総有の法理に基づき、社団の債務は社団の総有財産のみが責任を負い、構成員個人は原則として直接責任を負わないとする方向へ変更されている点に注意が必要である。現在の答案作成上は、原則として構成員の個人責任を否定しつつ、本判決は例外的な構成をとったものとして理解すべきである。
事件番号: 昭和45(オ)1038 / 裁判年月日: 昭和48年10月9日 / 結論: 棄却
権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、社団の構成員全員に一個の義務として総有的に帰属し、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し個人的債務ないし責任を負わない。