判旨
訴訟代理人は、特段の委任がなくとも、訴訟追行に必要な攻撃防御方法として契約解除の意思表示をし、また相手方の意思表示を受領する権限を有する。
問題の所在(論点)
訴訟代理人に、民法上の実体法上の効果を伴う意思表示(契約解除)をなし、またはこれを受領する権限が認められるか。訴訟代理権の範囲(民事訴訟法55条)が問題となる。
規範
訴訟代理人は、別段の委任がなくとも、訴訟上その訴訟追行に必要な攻撃防御の方法として、自ら契約解除の意思表示をなし得るとともに、相手方がした攻撃防御方法としての契約解除の意思表示を受領する権限をも有する。
重要事実
被上告人が上告人らに対し、債務不履行に基づく損害賠償等を求めた事案。訴訟の口頭弁論期日において、被上告人側から契約解除の意思表示がなされたが、その際、上告人らの本人らは出頭しておらず、訴訟代理人のみが出頭していた。上告人側は、当該解除の意思表示が本人らに到達していないため効力を生じないと主張して上告した。
あてはめ
本件における契約解除の意思表示は、訴訟内において攻撃防御方法としてなされたものである。記録によれば、当該意思表示がなされた口頭弁論期日には、上告人らの訴訟代理人が出頭していたことが明らかである。訴訟代理人は訴訟追行に必要な一切の裁判上の行為をする権限を有することから、相手方の意思表示の受領についても包括的な権限を有する。したがって、訴訟代理人がこれを受領したことにより、解除の意思表示は上告人らに到達したものと解するのが相当である。
結論
訴訟代理人が口頭弁論期日において相手方の解除の意思表示を受領したことにより、当該解除の効力は本人に及ぶ。したがって、上告人らの主張は理由がない。
実務上の射程
訴訟代理権の範囲が実体法上の形成権行使に及ぶことを認めた重要判例である。答案上は、訴訟上の解除等の意思表示の到達を論じる際、民事訴訟法55条1項の「一切の裁判上の行為」に含まれる理由として、本判決の「訴訟追行に必要な攻撃防御方法」というフレーズを引用して論証する。
事件番号: 昭和28(オ)1247 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
民訴八一条二項二号の特別の委任を受けていなかつた原告の訴訟代理人が請求の一部を取り下げても、右取下の部分はなおその裁判所に係属しているものと解すべきである。