民訴八一条二項二号の特別の委任を受けていなかつた原告の訴訟代理人が請求の一部を取り下げても、右取下の部分はなおその裁判所に係属しているものと解すべきである。
請求の一部につき裁判を脱漏した一場合
民訴法81条2項2号,民訴法195条
判旨
訴の取下げの特別委任を受けていない訴訟代理人による請求の減縮は無効であり、裁判所が当該減縮を前提に判決をした場合、減縮された部分は裁判の脱漏として依然として当該審級に係属する。
問題の所在(論点)
訴の取下げの特別委任を欠く訴訟代理人が行った請求の減縮の効力、および、それを看過して判決がなされた場合の訴訟状態が問題となる。
規範
訴訟代理人が訴の取下げ(民事訴訟法55条2項2号。旧法81条2項2号)を行うには、特別の委任を要する。特別の委任を欠く代理人による請求の減縮(一部取下げ)は無効であり、その行為による訴訟終了の効果は生じない。この場合、裁判所は無効な減縮により審理を免れることはできず、減縮された部分については裁判を脱漏したものとして、依然として当該審級に係属するものと解すべきである。
重要事実
被控訴人の訴訟代理人は、控訴審において金30万円の請求を15万円に減縮する旨の意思表示をした。しかし、当該代理人は訴の取下げに関する特別の委任を受けておらず、本人による追認も認められなかった。原裁判所は、この減縮を有効と扱って残余の15万円の範囲で認容判決を下したため、上告人が手続の違法を理由に上告した。
あてはめ
本件における請求の減縮は、実質的に訴の一部取下げにあたる。訴訟代理人が取下げの特別委任を受けていない以上、当該減縮の意思表示は無効であり、本人による追認も認められない。したがって、減縮の対象となった金15万円分については訴訟が終了しておらず、原裁判所がこれを除外して判決したことは「裁判の脱漏」に該当する。もっとも、有効に審理された残余部分の認容判決自体が直ちに違法となるわけではなく、また上告人(被告側)にとって不利益な判断ではないため、上告理由には当たらない。
結論
請求の減縮は無効であり、減縮された部分は依然として原審に係属している。原審は追認を得るか、追加判決を行うべきであるが、現判決の認容部分を違法とするものではないため、上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟代理権の範囲を逸脱した取下げ等の効力を論じる際に引用する。特に、特別委任を欠く無権代理行為がなされた場合、当該部分は「裁判の脱漏」として処理され、残部についての判決の効力には直接影響しないという実務上の処理指針を示すものとして重要である。
事件番号: 昭和27(オ)148 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において請求の趣旨を減縮した場合は訴の一部取下げにあたり、当該部分に関する第一審判決は当然に効力を失うため、裁判所は第一審判決を特に取り消すことなく、控訴棄却の判決をすることができる。 第1 事案の概要:被上告人(一審原告)が、第一審判決後に控訴審(原審)において損害金の率を変更し、請求を減…