判旨
無権代理人により作成された署名代理形式の手形行為について、本人が後日これを追認した場合には、当該手形行為は有効な手形行為として本人に対し効力を生ずる。
問題の所在(論点)
無権代理人が本人の氏名を記載・押印する署名代理の形式でなされた手形行為について、本人が追認したことにより、本人に手形上の責任が帰属するか。いわゆる手形行為の追認の可否が問題となる。
規範
手形行為の無権代理において、本人がその行為を追認したときは、民法上の無権代理の追認の規定(民法113条1項)に準じ、有効な手形行為として本人に対してその効力が帰属する。これは、署名代理(代理人が本人の氏名を記載・押印する形式)の方法により行われた場合であっても同様である。
重要事実
上告人(本人)の知人であるDは、上告人から預かっていた印鑑を使用し、本件手形の振出人欄に上告人の氏名を記載して押印した(署名代理形式)。Dには上告人を代理して手形を振り出す権限はなかったが、後に上告人はこのDによる本件手形行為を追認した。被上告人(所持人)が上告人に対し手形金の支払を求めたところ、上告人が無権代理・偽造等を理由に責任を争った事案である。
あてはめ
本件では、Dが上告人を代理する権限なく上告人の氏名を記載し印鑑を押捺して手形を振り出しており、形式的には無権代理(署名代理)にあたる。しかし、原審において上告人本人が本件手形行為を追認した事実が認定されている。手形行為といえども法律行為の一種であり、無権代理行為について本人が追認した以上、その効果は本人に帰属すると解すべきである。したがって、本件手形は偽造手形とは認められず、有効な手形行為として上告人に対し効力を生じる。
結論
本人が無権代理人による手形行為を追認した以上、有効な手形行為として本人に対し効力を生じる。したがって、上告人は手形金支払義務を免れない。
実務上の射程
手形行為における無権代理と偽造の区別に関わらず、本人の追認があれば責任を問えることを示す実務上重要な判決である。答案上は、無権代理人による署名代理がなされた場面で、民法113条1項を類推適用する際の根拠として活用できる。なお、偽造(代行)の場合でも本判決の理は妥当すると解されている。
事件番号: 昭和37(オ)412 / 裁判年月日: 昭和39年6月25日 / 結論: 棄却
一 手形の振出について民法第一一〇条を適用する場合において、受取人が振出代理人の機関として振出人の氏名を記載したとしても、当該手形の受取人を同条にいう「第三者」と解するにさまたげない。 二 約束手形の所持人が該手形の満期にこれを支払場所で所持していた場合には、振出人が出頭しないときでも、適法な提示があったものとみるべき…