判旨
送達の方法が従来の慣例と異なる「郵便に付する送達」であったために上告期間を遵守できなかったとしても、それは当事者の責めに帰することができない事由には当たらないため、訴訟行為の追完は認められない。
問題の所在(論点)
裁判所が従来の慣例とは異なる送達方法を採ったことにより、当事者が送達の効力発生時期等を誤認して上告期間を徒過した場合、民事訴訟法上の「当事者の責めに帰することができない事由」に該当するか。
規範
訴訟行為の追完(民事訴訟法97条1項、旧民訴法159条)が認められるためには、「当事者がその責めに帰することができない事由」により不変期間を遵守できなかったことが必要である。これは、当事者が善良な管理者の注意を尽くしても期間を遵守することが不可能な客観的事由がある場合を指す。
重要事実
上告人は、原判決の送達を昭和27年5月13日に受けたが、上告状を提出したのは上告期間経過後の同年5月28日であった。上告人は、裁判所が通常行う「郵便による送達」ではなく、異例の「郵便に付する送達」の方法を採ったため、送達の性質を誤認して期間を徒過したと主張し、訴訟行為の追完を申し立てた。
あてはめ
上告人は、原裁判所が民訴法上の届出がない場合でも常に「郵便による送達」を行う慣例があったと主張する。しかし、適法な送達が行われた以上、当事者はその送達の法的性質を確認し、期間を管理すべき責務を負う。送達方法が慣例と異なるという主観的な誤認や期待は、客観的に期間遵守を不可能にする事由とはいえず、自己の責任において対処すべき事項である。したがって、本件の遅滞は上告人の責めに帰すべきものといえる。
結論
本件上告は不変期間の経過後になされた不適法なものであり、追完の事由も認められないため、却下される。
実務上の射程
事件番号: 昭和45(オ)513 / 裁判年月日: 昭和46年4月20日 / 結論: 破棄差戻
訴訟代理人である弁護士が、所属弁護士会の規則に従い同会を受送達場所、送達受取人と定めて届出ていたところ、同会の送達部から送付を受けた第一審判決正本に「昭和四四年九月二四日受送達」の旨ゴム印が押捺されていたので、同日から二週間内である同年一〇月八日控訴を提起したが、実際は、弁護士会が執行官から右正本の交付を受け送達の効力…
送達手続が適法である限り、運用の慣例との相違を理由とした追完は厳格に否定される。答案上は、追完の「帰責事由」の有無を判断する際、裁判所の運用の瑕疵ではなく、当事者側の注意義務の程度を強調する文脈で使用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1019 / 裁判年月日: 昭和39年9月15日 / 結論: 破棄差戻
大阪市内の郵便局に書留速達郵便物として差し出した控訴状が、通じて四日を費して名古屋市内の裁判所に配達され、控訴代理人の予知できない事情に基づく郵便物延着の疑をさしはさみうるにかかわらず、この間の事情を審究せず、右郵便物配達の時にはすでに控訴期間が経過していたとの理由で、控訴を不適法として却下した判決には、審理不尽の違法…
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…
事件番号: 昭和42(オ)346 / 裁判年月日: 昭和43年12月17日 / 結論: 棄却
サイゴン在住の本人が、公示送達の方法による判決正本の送達を知つた後、その責に帰すべき遅延なしに控訴提起の訴訟委任状を弁護士のもとに送附したときには、この時をもつて、控訴期間不遵守の事由が止んだものというべきである。