サイゴン在住の本人が、公示送達の方法による判決正本の送達を知つた後、その責に帰すべき遅延なしに控訴提起の訴訟委任状を弁護士のもとに送附したときには、この時をもつて、控訴期間不遵守の事由が止んだものというべきである。
控訴提起の訴訟委任状が弁護士のもとに送附されたときをもつて民訴法第一五九条の「事由ノ止ミタル」時に当るとされた事例
民訴法366条,民訴法159条
判旨
当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、民事訴訟法上の訴訟行為の追完が認められる。本件では、控訴提起について同法159条(現行97条1項)の規定による追完を認めた原審の判断が正当として維持された。
問題の所在(論点)
不変期間である控訴期間を徒過した場合において、民事訴訟法159条(現行97条1項)にいう「当事者がその責めに帰することができない事由」によるものとして、訴訟行為の追完が認められるか。
規範
訴訟行為の追完が認められるためには、当事者が「その責めに帰することができない事由」により不変期間を遵守できなかったことが必要である。これは、当事者が善良な管理者の注意を尽くしても期間を遵守し得なかった客観的な事情があることを意味する。
重要事実
本件の上告人は、原審が認定した事実関係に基づき、控訴期間を徒過したことについて民事訴訟法159条(現行97条1項)に基づく訴訟行為の追完を申し立てた。原審は、当該期間徒過が上告人の責めに帰することができない事由によるものであると認定し、追完を認める判断を下した。これに対し、上告人が原審の認定判断に違法があるとして上告したものである。
事件番号: 昭和45(オ)513 / 裁判年月日: 昭和46年4月20日 / 結論: 破棄差戻
訴訟代理人である弁護士が、所属弁護士会の規則に従い同会を受送達場所、送達受取人と定めて届出ていたところ、同会の送達部から送付を受けた第一審判決正本に「昭和四四年九月二四日受送達」の旨ゴム印が押捺されていたので、同日から二週間内である同年一〇月八日控訴を提起したが、実際は、弁護士会が執行官から右正本の交付を受け送達の効力…
あてはめ
最高裁判所は、原審が認定した事実関係の過程に違法はないと判断した。具体的な事実関係は判決文からは不明であるが、原審が確定した事実関係のもとでは、控訴の追完を認めた判断は正当であると結論付けた。すなわち、期間徒過が当事者の不注意によるものではなく、客観的に避けられない事情によるものであったとする原審の評価を、最高裁も適法なものとして是認したといえる。
結論
本件控訴につき民事訴訟法159条(現行97条1項)の規定による追完を認めた原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
不変期間徒過の救済規定である現行97条1項の適用要件に関する判断事例である。答案上では、期間徒過後の救済を論じる際の根拠条文として本条を挙げ、事案の具体的な事情(送達の不備や事故等)が「責めに帰することができない事由」に該当するかを検討する際の基準となる。
事件番号: 昭和37(オ)1019 / 裁判年月日: 昭和39年9月15日 / 結論: 破棄差戻
大阪市内の郵便局に書留速達郵便物として差し出した控訴状が、通じて四日を費して名古屋市内の裁判所に配達され、控訴代理人の予知できない事情に基づく郵便物延着の疑をさしはさみうるにかかわらず、この間の事情を審究せず、右郵便物配達の時にはすでに控訴期間が経過していたとの理由で、控訴を不適法として却下した判決には、審理不尽の違法…
事件番号: 昭和27(オ)163 / 裁判年月日: 昭和29年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で追加された請求が、元の請求と請求原因を全く異にし、かつ元の請求の当否を判断する先決関係にもない場合、それは訴の変更に該当する。その変更が訴訟手続を遅延させると認められるときは、裁判所はこれを許容しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は第一審において、対象土地の所有権確認および移転登…
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…