昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、民訴法一五九条一項所定の追完事由の存否について十分な職権調査を尽くすことなく、控訴期間を徒過した不適法な控訴であるとしてこれを却下することは違法である。
控訴期間の不遵守が控訴代理人の責に帰すべからざる事由によるかどうかにつき職権調査を尽くさなかつたことが違法とされた事例
民訴法159条,民訴法366条,民訴法395条6号
判旨
控訴期間徒過が、年末年始の郵便渋滞等により予知できない郵便配達の遅滞に起因する場合、民事訴訟法97条1項(旧159条1項)の「責めに帰することができない事由」に該当し、訴訟行為の追完が認められる余地がある。裁判所は、当該事由の存否について職権で十分な調査を尽くすべきである。
問題の所在(論点)
控訴状を控訴期間内に書留速達郵便で発送したものの、年末年始の郵便渋滞により期間経過後に到達した場合、民事訴訟法97条1項(旧159条1項)にいう「当事者がその責めに帰することができない事由」による不変期間の徒過として、追完が認められるか。
規範
不変期間の遵守ができなかったことが「当事者がその責めに帰することができない事由」によるものといえるためには、当該遅滞が、当事者(または代理人)において通常予知することができない程度の客観的な障害に起因することを要する。特に書留郵便等による提出において、郵便業務の特殊な事情等から生じた通常予測困難な配達遅滞がある場合には、追完が認められるべきである。
重要事実
事件番号: 昭和45(オ)513 / 裁判年月日: 昭和46年4月20日 / 結論: 破棄差戻
訴訟代理人である弁護士が、所属弁護士会の規則に従い同会を受送達場所、送達受取人と定めて届出ていたところ、同会の送達部から送付を受けた第一審判決正本に「昭和四四年九月二四日受送達」の旨ゴム印が押捺されていたので、同日から二週間内である同年一〇月八日控訴を提起したが、実際は、弁護士会が執行官から右正本の交付を受け送達の効力…
上告人の第一審訴訟代理人は、昭和53年12月15日に判決正本の送達を受け、控訴期間内である同年12月26日に、控訴状を書留速達郵便として発送した。しかし、年末年始における郵便業務の渋滞という特殊事情により、当該郵便物が原審に配達されたのは控訴期間経過後の昭和54年1月1日であった。原審は、上告人の責に帰すべき事由の不存在をうかがい知る資料がないとして、追完を認めず不適法却下とした。
あてはめ
本件における控訴状の発送は、控訴期間満了の数日前(12月26日)になされており、かつ書留速達という通常速やかに到達すべき方法が用いられている。年末年始の郵便渋滞という事情があるにせよ、配達が翌年1月1日まで大幅に遅延したことは、控訴代理人において予知することのできない程度のものであった疑いがある。それにもかかわらず、原審が追完事由の存否について職権調査を尽くさず、直ちに却下したことは審理不尽の違法がある。
結論
控訴状の配達遅延が予知不可能な程度のものであれば、追完事由が認められる。原判決を破棄し、追完事由の存否をさらに審理させるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
司法試験においては、不変期間の徒過に関する救済の論点(民訴法97条1項)で活用する。郵便事故や予知困難な配達遅滞は「責めに帰することができない事由」の典型例となり得るが、発送時期が期間満了直前すぎる場合には当事者の過失が問われる点に注意が必要である。また、裁判所の職権調査義務の文脈でも言及しうる。
事件番号: 昭和27(オ)760 / 裁判年月日: 昭和27年9月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】送達の方法が従来の慣例と異なる「郵便に付する送達」であったために上告期間を遵守できなかったとしても、それは当事者の責めに帰することができない事由には当たらないため、訴訟行為の追完は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決の送達を昭和27年5月13日に受けたが、上告状を提出したのは上告期間…
事件番号: 昭和23(オ)6 / 裁判年月日: 昭和23年5月6日 / 結論: 棄却
郵送遅延は、当時の事情に照らし当事者の予想し得ない程度のものでなければ、不変期間不遵守の原状回復理由とならない。
事件番号: 昭和37(オ)1019 / 裁判年月日: 昭和39年9月15日 / 結論: 破棄差戻
大阪市内の郵便局に書留速達郵便物として差し出した控訴状が、通じて四日を費して名古屋市内の裁判所に配達され、控訴代理人の予知できない事情に基づく郵便物延着の疑をさしはさみうるにかかわらず、この間の事情を審究せず、右郵便物配達の時にはすでに控訴期間が経過していたとの理由で、控訴を不適法として却下した判決には、審理不尽の違法…