郵送遅延は、当時の事情に照らし当事者の予想し得ない程度のものでなければ、不変期間不遵守の原状回復理由とならない。
郵送遅延と原状回復理由
民訴法159条
判旨
控訴状を郵送した際に生じた数日程度の郵便遅延は、当時の通信事情に照らし当事者が予想できないものとはいえず、控訴期間不遵守の「責めに帰することができない理由」には当たらない。また、裁判所には当事者に対し原状回復の申立ての猶予を与える手続的義務も存在しない。
問題の所在(論点)
郵送による控訴状提出の遅延が、控訴期間を徒過したことについて当事者の責めに帰することができない理由(原状回復の理由)に該当するか。また、裁判所は控訴却下に際し原状回復の申立てを促す等の手続を執る義務を負うか。
規範
控訴期間の徒過について民事訴訟法上の原状回復が認められるためには、その不遵守が当事者の予想し得ない程度の事由によるものであることを要する。通信交通の著しい渋滞が想定される状況下における通常の範囲内の郵送遅延は、当事者が予想すべき事由に含まれ、直ちに原状回復の理由とはならない。
重要事実
上告人(控訴人)は、昭和22年10月18日に第一審判決の送達を受けた。控訴状を同年10月27日に大阪中央郵便局から郵送したが、裁判所に到達したのは同年11月4日であり、控訴期間を徒過していた。上告人は、通常5日間で到達するところ3日間遅延したものであるから、裁判所は原状回復の申立ての猶予を与えるべきであったと主張して上告した。
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…
あてはめ
本件当時のわが国の通信交通事情は著しく渋滞しがちな状況にあり、控訴状が予定より3日間遅延して到達することは、当事者にとって必ずしも予想し得ない程度のものとはいえない。したがって、本件の遅延は原状回復の理由(責めに帰することができない事由)とは認められない。また、法律上、裁判所が当事者に対し原状回復の申立てを待つなどの猶予を与えるべき義務を課す規定も存在しない。
結論
本件控訴状の郵送遅延は原状回復の理由にはならず、原審が特段の猶予を与えずになした控訴却下判決に違法はない。
実務上の射程
期間遵守に関する自己責任原則を厳格に解した事例である。現在の実務においても、郵便事情による遅延は特段の事情(天災地変等)がない限り「責めに帰することができない事由」と認められにくいため、答案上は期間徒過の救済を否定する方向での有力な根拠となる。
事件番号: 昭和45(オ)513 / 裁判年月日: 昭和46年4月20日 / 結論: 破棄差戻
訴訟代理人である弁護士が、所属弁護士会の規則に従い同会を受送達場所、送達受取人と定めて届出ていたところ、同会の送達部から送付を受けた第一審判決正本に「昭和四四年九月二四日受送達」の旨ゴム印が押捺されていたので、同日から二週間内である同年一〇月八日控訴を提起したが、実際は、弁護士会が執行官から右正本の交付を受け送達の効力…
事件番号: 昭和27(オ)163 / 裁判年月日: 昭和29年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で追加された請求が、元の請求と請求原因を全く異にし、かつ元の請求の当否を判断する先決関係にもない場合、それは訴の変更に該当する。その変更が訴訟手続を遅延させると認められるときは、裁判所はこれを許容しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は第一審において、対象土地の所有権確認および移転登…