郵送遅延は、当時の事情に照らし当事者の予想し得ない程度のものでなければ、不変期間不遵守の原状回復理由とならない。
郵送遅延と原状回復理由。
民訴法159条
判旨
年末年始における郵便の遅延は、当事者が予想し得ない程度のものとはいえず、控訴期間徒過について「当事者がその責めに帰することができない事由」があるとは認められない。
問題の所在(論点)
年末年始における郵便の遅延が、民事訴訟法第97条第1項(旧法159条)にいう「当事者がその責めに帰することができない事由」に該当するか。
規範
民事訴訟法上の訴訟行為の追完が認められるためには、当事者がその責めに帰することができない事由(不変期間を遵守できなかったことについて当事者に過失がないこと)が必要である。郵便等の通信事情により期間を徒過した場合には、その遅延が当時の社会状況に照らして「当事者が通常予想し得ない程度」のものであるか否かにより判断される。
重要事実
第一審判決正本が被告の訴訟代理人に昭和38年12月21日に送達された。控訴の不変期間は2週間であるため、期間満了日は昭和39年1月4日であったが、控訴状が裁判所に提出(到達)したのは同年1月6日であった。被告側は、年末年始の郵便遅延という特殊な事情により期間を徒過したものであり、追完が認められるべきであると主張して控訴を提起した。
あてはめ
わが国の国内事情において、年末年始は通信交通が著しく渋滞しがちな時期である。このような時期に郵送による提出を行う場合、郵便物の到達が通常よりも遅れることは、当事者にとって十分に予測可能な範囲内にある。したがって、本件の控訴状郵送遅延は「当事者の予想しえない程度」のものとはいえず、期間内に到達するように余裕を持って送付しなかったことについて当事者に過失があるといえる。ゆえに、責めに帰することができない事由は認められない。
結論
控訴期間の徒過について追完は認められず、控訴を不適法として却下した原審の判断は妥当である。
実務上の射程
不変期間の遵守において郵送を利用する場合の過失の有無に関する判断基準を示すものである。年末年始や天候悪化等の予測可能な遅延要因がある場合、当事者はそれを織り込んで行動すべきであり、単なる郵便遅延のみを理由とした追完は厳格に制限されることを示唆している。
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