第一審における訴状、判決を含む訴訟書類の送達が公示送達によつてされた場合であつても、自己に対し訴訟が提起されていることを知り、他日判決が言い渡されるであろうことが十分に予想され、しかもその内容が自己に不利益なものとなることも優に予測されるにもかかわらず、なんらの調査もせずに控訴期間を徒過したときは、控訴期間を遵守することができなかつたことが控訴人の責に帰することのできない事由によるものということはできない。
第一審の訴訟手続が公示送達によつてされ控訴期間を徒過した場合に控訴の追完が認められなかつた事例
民訴法159条,民訴法366条
判旨
被告が原告から訴えを提起されていることを確知しており、将来の判決言渡しやその内容が自らに不利になることを十分に予測し得る状況にあった場合には、公示送達により判決が送達されても、控訴期間の徒過は「責めに帰することができない事由」(民事訴訟法92条1項)には当たらない。
問題の所在(論点)
訴訟が提起されていることを認識しながら公示送達により判決が送達された場合において、不変期間(控訴期間)の徒過が、民事訴訟法92条1項にいう「当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった」ときに該当するか。
規範
不変期間の徒過について、当事者がその期間を遵守しなかったことが「責めに帰することができない事由」によるもの(民事訴訟法92条1項)というためには、当事者が通常の注意を尽くしても期間を遵守できない事情があることを要する。公示送達による判決送達がなされた場合であっても、訴訟提起の事実を具体的に認識し、自らに不利な判決が出ることを予見し得る状況にある者が、何ら調査を行わずに期間を徒過した場合は、重大な怠慢があるものとして右事由には当たらない。
重要事実
被上告人(原告)は、別件訴訟の紛争を背景として上告人(被告)に対し不動産不法占拠等の訴えを提起した。上告人の住所不明のため数回にわたり訴状等の送達が不能となった際、被上告人の代理人は、別件訴訟等を通じて面識のあった上告人の代理人に対し、訴えを提起したが送達不能となっている旨を伝え、住所の教示を依頼した。上告代理人は昭和52年秋頃にこの内容を上告人に伝え、この時点で上告人及び上告代理人は本件訴訟の提起を確知した。その後、第1審判決が公示送達により言い渡され、翌日効力を生じたが、上告人は控訴期間経過後に控訴を提起し、追完を申し立てた。
あてはめ
上告人は、上告代理人を通じて本件訴訟が提起されていることを昭和52年秋頃には具体的に確知していた。この状況下では、他日に判決が言い渡されること、およびその内容が上告人にとって不利なものとなることは十分に予測可能であったといえる。それにもかかわらず、上告人がその後の進展について何ら調査を行わずに放置し、控訴期間を徒過したことは「重大な怠慢」と評価せざるを得ない。したがって、判決送達が公示送達の方法によったことを考慮しても、期間遵守が不可能であったことについて上告人に過失がないとは認められない。
結論
本件控訴の追完は認められない。上告人が控訴期間を遵守できなかったことは、上告人の責めに帰すべき事由によるものと解されるため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
公示送達案件における救済(追完)の限界を示す。訴訟の係属を現実に知っていた(または知り得た)被告については、公示送達による手続進行を放置したこと自体に過失が認められやすく、追完が否定される傾向にある。答案上は、被告側の認識の有無や調査の容易性を具体的事実から拾い、期待可能性の観点から「責めに帰することができない事由」を検討する際の有力な判断指針となる。
事件番号: 昭和39(オ)484 / 裁判年月日: 昭和39年11月6日 / 結論: 棄却
郵送遅延は、当時の事情に照らし当事者の予想し得ない程度のものでなければ、不変期間不遵守の原状回復理由とならない。
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…