判旨
判決言渡日等の附記を欠く判決正本の送達であっても、原本の内容と一致しており当事者が判決内容を知る機会を得たといえる場合には、最初の送達により控訴期間が進行する。また、不備を補正した正本が期間満了当日に再送達されたとしても、控訴提起が可能である限り、期間不遵守につき当事者の責めに帰すべからざる事由があるとは認められない。
問題の所在(論点)
判決言渡日の記載を欠く判決正本の送達によって控訴期間が進行するか。また、期間満了当日に補正された正本が再送達された場合に、訴訟行為の追完が認められるか。
規範
民事訴訟法上の判決書への言渡日の附記等は訓示規定にすぎず、これらに欠缺があっても、正本の内容が原本の記載と一致する限り、当該正本の送達は適法なものとして効力を有する。送達により当事者が判決内容を知り得る状態に置かれ、控訴提起に支障がない場合には、最初の送達時点から控訴期間(民事訴訟法285条)が起算される。
重要事実
第一審判決の正本が原告代理人に送達されたが、同正本には判決の言渡・交付日の記載が脱漏していた。書記官は一旦正本を回収して当該項目を追記し、控訴期間満了日である11月8日の午前中に再送達した。原告側は同月13日に控訴を提起したが、原審は最初の送達(10月25日)を基準に期間徒過として控訴を却下。上告人は、最初の送達は無効であり、かつ期間不遵守には「責に帰すべからざる事由」(民事訴訟法97条)があると主張した。
あてはめ
本件で最初に送達された正本は、当事者、主文、事実及び理由等において原本と一致しており、控訴人代理人は判決内容を知る機会を持っていた。そのため、控訴提起に支障はなく、最初の送達は有効である。また、補正後の正本は期間満了日の午前9時40分に再送達されており、同日中に控訴を提起することは客観的に可能であったといえる。したがって、期間を遵守できなかったことについて、当事者の責めに帰すべからざる事由があったとは解されない。
結論
最初の送達により控訴期間は進行し、期間満了当日の再送達をもってしても追完は認められない。したがって、期間徒過後の控訴は不適法であり却下される。
実務上の射程
判決書の形式的不備が送達の効力や控訴期間の起算点に影響するかを判断する際の基準となる。実務上、判決正本の送達という重要な手続であっても、実質的に当事者の不服申立ての機会が保障されている限り、形式的瑕疵を理由に送達を無効としない柔軟な姿勢を示している。答案上は、期間計算の起算点や、97条の追完の要件(不帰責性)の厳格なあてはめの例として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)484 / 裁判年月日: 昭和39年11月6日 / 結論: 棄却
郵送遅延は、当時の事情に照らし当事者の予想し得ない程度のものでなければ、不変期間不遵守の原状回復理由とならない。