原告が、訴えの目的である移転登記義務の履行について被告と継続的に和解の交渉をし、原告側の譲歩を内容とする和解成立も予想できる状況にありながら、被告から海外渡航により不在である旨告げられた期間中に訴えを提起し、従前の経緯を一切伏せたまま公示送達の許可を受けた上、勝訴判決を得た場合において、被告も右訴えが提起されることは予測し得ず、被告が住民登録の変更をしなかったのも原告の粗暴な言動を恐れたことによるなど判示の事情の下では、被告の控訴の追完は許される。
控訴の追完が認められた事例
民訴法159条1項,民訴法178条,民訴法366条
判旨
公示送達により一審判決がなされた場合の控訴期間徒過が「責めに帰すべからざる事由」によるか否かは、被告側の事情のみならず、原告側の公示送達に至る手続の経緯等を総合的に考慮して判断すべきである。特に、原告が公示送達制度を悪用したと評価される事情がある場合には、被告の不注意等があっても追完が認められる余地がある。
問題の所在(論点)
訴状から判決正本まで全書類が公示送達で行われた場合において、被告が居所を秘匿し住民票を放置していたという事情があるとき、控訴期間の徒過について「その責めに帰することができない事由」(民訴法97条1項)が認められるか。
規範
民事訴訟法97条1項(旧159条1項)にいう「その責めに帰することができない事由」の存否を判断するに当たっては、被告側の事情だけではなく、公示送達手続によらざるを得なかったことについての原告側の事情をも総合的に考慮すべきである。具体的には、訴訟提起前の交渉経緯、被告の不在期間の知悉、公示送達の必要性、制度悪用の有無等を勘案して決する。
重要事実
被上告人(原告)と上告人(被告)は土地名義を巡り交渉中であったが、上告人は被上告人の粗暴な言動を避け、住民票を置いたまま居所を隠して生活していた。上告人は被上告人の代理人に「8、9月まで外国に行く」と伝えていたが、被上告人はその期間中に本訴を提起した。被上告人は上告人が不在であることを承知しながら、上告人の子から「8月以降に転居予定」との連絡を受けていた事実を秘匿したまま、転居先不明として公示送達を申し立て、上告人不出頭のまま勝訴判決を得た。
事件番号: 昭和54(オ)613 / 裁判年月日: 昭和55年10月28日 / 結論: 破棄差戻
昭和五三年一二月一五日判決正本の送達を受けた第一審判決につき、控訴代理人が同年一二月二六日その控訴状を書留速達郵便物として長崎市内の郵便局に差し出したところ、同五四年一月一日に至つて福岡高等裁判所に配達されたとの事情のもとでは、右控訴状の配達の遅延は控訴代理人において予知することのできない程度のものであつた疑いがあり、…
あてはめ
上告人が被上告人の言動を恐れて居所を秘匿し住民票を変更しなかった事情はあるが、一方で被上告人側は、直前まで和解交渉を継続しており和解の可能性もあったこと、上告人が海外渡航中と認識しながら不在期間を狙って提訴したこと、入手していた上告人の動静情報を裁判所に提出せず公示送達を申し立てたことが認められる。これらは公示送達制度を悪用したものと非難を免れない。このような原告側の事情を総合考慮すれば、上告人が本訴提起を予測できなかったこともやむを得ず、控訴期間の遵守は期待できないといえる。
結論
上告人には「その責めに帰することができない事由」があるといえるため、控訴の追完が認められる。本件控訴を不適法として却下した原審の判断は誤りであり、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
公示送達による判決確定後の救済事由を広く認めた重要な判例である。答案上では、被告側の過失(住民票放置等)があっても直ちに追完を否定せず、相手方(原告)の訴訟活動の信義則違反や不当性を「総合考慮」の要素として構成する際に活用する。
事件番号: 昭和41(オ)935 / 裁判年月日: 昭和42年2月24日 / 結論: 棄却
被告とその法定代理人が住民登録をした場所に居住し、原告が訴提起直前に右居住の場所に被告の法定代理人を訪ねて訴の目的である債務の履行につき折衝したことがあつたにもかかわらず、原告から訴状の受送達者の住所が不明であるとして公示送達の申立がされ、よつて被告の法定代理人に対する第一審判決正本の送達にいたるまでのすべての書類の送…
事件番号: 平成2(オ)851 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一審で第三者が被告の氏名を冒用して訴訟行為をした場合でも、被告本人が自ら控訴を申し立て、その選任した訴訟代理人が異議をとどめずに本案について弁論をし、判決を受けたときは、一審での第三者の訴訟行為は追認されたものと解すべきである。
事件番号: 平成7(オ)1203 / 裁判年月日: 平成12年1月27日 / 結論: その他
一 渉外的な法律関係において、ある法律問題(本問題)を解決するために不可欠の前提問題が国際私法上本問題とは別個の法律関係を構成している場合、その前提問題の準拠法は、法廷地である我が国の国際私法により定めるべきである。 二 渉外親子関係の成立の判断は、まず嫡出親子関係の成立についてその準拠法を適用し、嫡出親子関係が否定さ…