被告とその法定代理人が住民登録をした場所に居住し、原告が訴提起直前に右居住の場所に被告の法定代理人を訪ねて訴の目的である債務の履行につき折衝したことがあつたにもかかわらず、原告から訴状の受送達者の住所が不明であるとして公示送達の申立がされ、よつて被告の法定代理人に対する第一審判決正本の送達にいたるまでのすべての書類の送達が公示送達により行なわれた場合において、被告の法定代理人が控訴期間の経過後はじめて判決正本の公示送達の事実を知り、ただちに控訴を提起したときは民訴法第一五九条にいう「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ不変期間ヲ遵守スルコト能ハサリシ場合」にあたるものとして、右控訴は適法であると解すべきである。
判決の公示送達の不知を理由とする上訴の追完が許された事例
民訴法159条
判旨
相手方が住居を知りながらあえて住所不明として公示送達の申立てを行い、判決が言い渡された場合、当事者は「自己の責めに帰することができない事由」により不変期間を遵守できなかったものとして、訴訟行為の追完(民事訴訟法97条1項)が認められる。
問題の所在(論点)
相手方が虚偽の申立てを行って公示送達の手続きがとられた場合に、判決送達による不変期間(控訴期間)の経過を「自己の責めに帰することができない事由」によるものとして、民事訴訟法97条1項(旧民訴法159条)の追完を認めることができるか。
規範
不変期間を経過した訴訟行為であっても、当事者がその責めに帰することができない事由によりこれを遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後、遅滞なく欠缺した訴訟行為を追完することができる。公示送達の方法によって判決が送達された場合であっても、相手方が住居を知りながら虚偽の申立てを行った等の特段の事情がある場合には、当事者が判決の送達を知らなかったことに過失はないと解すべきである。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人(被告)の正確な居住地を知り、実際にその地で交渉も行っていた。しかし、被上告人が要求に応じなかったため、上告人は被上告人の旧本籍地を住所と称して提訴し、受送達者の住所が不明であると偽って公示送達の申立てを行った。第一審はこの申立てに基づき公示送達を行い、被上告人不出頭のまま上告人勝訴の判決を言い渡した。判決書の送達も公示送達により行われ、被上告人は控訴期間経過後に初めてこの事実を知り、直ちに控訴を申し立てた。
あてはめ
被上告人は母と共に適法に住民登録をして居住しており、上告人およびその代理人弁護士はその居住地を具体的に認識して訪問・交渉まで行っていた。それにもかかわらず、住所不明と偽って公示送達を利用したことは不当な訴訟遂行である。このような状況下では、被上告人が公示送達による判決の送達を感知し得なかったとしても、被上告人に不注意があったとはいえず、判決の事実を知ってから直ちに控訴を提起している以上、追完の要件を満たすと評価される。
結論
被上告人は自己の責めに帰することができない事由により控訴期間を遵守できなかったものと認められるため、本件控訴の追完は適法であり、控訴提起は有効である。
実務上の射程
公示送達の要件欠缺がある場合であっても、形式的に送達の効力が生じている以上、判決は有効に確定し得る。しかし、本判例は追完法理を用いることで実質的な救済を図っており、特に「相手方が悪意で住所不明と偽った場合」には、追完が認められる強力な根拠となる。答案上は、送達の有効性と追完の可否を分けて論じる際に不可欠な判例である。
事件番号: 昭和46(オ)1127 / 裁判年月日: 昭和47年9月7日 / 結論: 棄却
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。
事件番号: 昭和31(オ)701 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
民訴第三八三条により口頭弁論を経ないで判決することができる場合は、あらかじめその言渡期日を告知する必要はない
事件番号: 昭和47(オ)620 / 裁判年月日: 昭和49年12月24日 / 結論: 棄却
金銭債権の担保のため債務者所有の不動産に所有権移転請求権保全の仮登記をするのに代えて、他の債権者の債権担保のため所有権移転請求権保全の仮登記が被担保債権の消滅にもかかわらず残存しているのを利用して新債権者への右請求権移転の附記登記をした場合、附記登記後に右不動産につき利害関係を有するにいたつた第三者は、特別の事情のない…