一審で第三者が被告の氏名を冒用して訴訟行為をした場合でも、被告本人が自ら控訴を申し立て、その選任した訴訟代理人が異議をとどめずに本案について弁論をし、判決を受けたときは、一審での第三者の訴訟行為は追認されたものと解すべきである。
第三者の一審における訴訟行為につき二審で追認があったものとされた事例
民訴法54条
判旨
氏名冒用訴訟の被告とされた本人が、判決後に自ら控訴を申し立て、選任した訴訟代理人が本案について弁論を行った場合、第一審における訴訟手続の瑕疵は追認により補正される。
問題の所在(論点)
氏名冒用訴訟(無権代理人と同様の性質を有する訴訟)において、第一審で本人の承諾なく訴訟手続が進められた場合、本人が自ら控訴し本案につき弁論を行うことで、第一審の手続上の瑕疵は補正されるか。
規範
氏名を冒用された本人が、冒用者による訴訟行為の存在を認識した上で、自ら上訴を申し立てて本案につき弁論を行うなど、当該訴訟を有効なものとして継続させる意思が客観的に認められる場合には、遡及的に訴訟行為の瑕疵を追認したものと解すべきである。これにより、第一審における訴訟手続上の瑕疵は補正される。
重要事実
本件では、上告人の長男であるDが上告人の氏名を冒用して第一審の訴訟手続に関与していた。第一審判決が出された後、上告人本人は自ら控訴を申し立てた。さらに、上告人が選任した訴訟代理人が、原審(控訴審)において本案について弁論を行い、訴訟を遂行した。
事件番号: 昭和54(オ)879 / 裁判年月日: 昭和55年9月26日 / 結論: 棄却
無権代理人がした訴訟行為の追認は、ある審級における手続がすでに終了したのちにおいては、その審級における訴訟行為を一体として不可分的にすべきものであつて、すでに終了した控訴審における訴訟行為のうち控訴提起行為のみを選択して追認することは許されない。
あてはめ
上告人は、氏名冒用が行われた第一審判決に対し、自ら控訴を申し立てている。その上で、選任した代理人を通じて控訴審の本案につき弁論を行っている。この行為は、第一審における冒用者による訴訟行為を、本人が有効なものとして受け入れる意思表示に他ならない。したがって、民事訴訟法上の代理権の欠缺と同様、追認によって瑕疵が補正されたといえる。
結論
第一審の訴訟手続に氏名冒用の瑕疵があったとしても、その後の控訴および本案弁論により追認されたものとみなされ、手続上の違法はない。
実務上の射程
氏名冒用訴訟や無権代理訴訟において、本人に有利・不利を問わず、本人が訴訟を継続する挙動に出た場合の追認の効力を認める基準となる。答案上では、代理権の欠缺等の手続的瑕疵が後の訴訟行為によって治癒されるか否かを論ずる際に、本判例を根拠として追認の法理を適用できる。
事件番号: 昭和51(オ)858 / 裁判年月日: 昭和52年12月8日 / 結論: 破棄差戻
民法上の組合が不動産を取得するにあたり理事名義に所有権移転登記を経由することを承諾した組合員甲が、組合から右不動産を譲り受けたのちも理事所有名義のままにしておいた場合において、さらに理事の意思に基づいて第三者乙に対する所有権移転登記が経由されたときは、甲は、乙の所有権取得の無効をもつて善意無過失の第三者丙に対抗すること…
事件番号: 昭和41(オ)90 / 裁判年月日: 昭和43年10月15日 / 結論: 棄却
訴の変更申立を許すべからざるものと判断した場合には、その旨を判決の主文において宣言することを要するものではなく、理由中において説示すれば足りる。
事件番号: 昭和42(オ)1391 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 破棄差戻
無権代理人甲が乙の代理人と称して丙と締結した抵当権設定契約を乙が追認したのち、甲が乙の代理人と称して丁と抵当権設定契約を締結した場合において、丁が甲に乙を代理して右抵当権設定契約をする権限があると信ずべき正当の事由を有するときは、乙は、民法一一〇条および一一二条の類推適用により、甲のした抵当権設定契約につき責に任じなけ…