無権代理人がした訴訟行為の追認は、ある審級における手続がすでに終了したのちにおいては、その審級における訴訟行為を一体として不可分的にすべきものであつて、すでに終了した控訴審における訴訟行為のうち控訴提起行為のみを選択して追認することは許されない。
訴訟行為の一部のみの追認が許されないとされた事例
民訴法54条
判旨
無権代理人がした訴訟行為を追認する場合、既にある審級における手続が終了しているときは、その審級における訴訟行為を一体として不可分的に追認すべきであり、特定の一部の行為のみを選択して追認することは許されない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法上の無権代理人が行った一連の訴訟行為について、既にその審級が終了している場合に、特定の訴訟行為(控訴の提起のみ等)を限定して追認すること(一部追認)が可能か。
規範
訴訟行為は相互に関連をもちながら手続を形成し、各審級で終局的判断を経て発展・完結する性質を有する。そのため、終了した審級における無権代理人の訴訟行為を追認する場合、訴訟手続の安定および不可分性の観点から、その審級における全訴訟行為を一体として追認しなければならず、一部の行為(控訴提起等)のみを選択的に追認することは認められない。
重要事実
上告人らは、前訴の第一審では適法な代理人により応訴したが、控訴審においては委任していない無権代理人によって訴訟行為がなされた。前訴が終了した後、上告人らは、当該控訴審における訴訟行為のうち「控訴提起行為」のみを追認し、その余の行為の効力を否定した上で、改めて第一審判決の取消しと請求棄却を求めて本件訴訟を提起した。
事件番号: 昭和63(オ)924 / 裁判年月日: 平成3年3月22日 / 結論: 棄却
未成年者甲の後見人に就職した乙及び丙が甲を代理して売買契約を締結した場合において、乙及び丙は甲の実親であり、甲の養父の死亡により戸籍上甲の後見人に就職した旨記載され、ともに正当な後見人となったものと考えて、甲の財産を管理してきたもので、右売買に右両名が後見人として関与したことにより、甲の利益が損なわれたわけではなく、甲…
あてはめ
本件において上告人らは、終了した前訴控訴審における無権代理人の行為のうち、自らに有利な「控訴提起」のみを追認しようとしている。しかし、訴訟手続は一体として進行するものであり、審級単位で完結した判断が示されている以上、その一部のみを有効とし他を無効とすることは、訴訟手続の連続性と明確性を著しく害する。したがって、控訴審における訴訟行為を不可分な一体として扱わなかった上告人らの追認は、法的に許容されない。
結論
無権代理人による訴訟行為の一部追認は認められない。したがって、控訴提起のみを追認して前訴の判断を争う上告人らの主張は理由がない。
実務上の射程
無権代理人が関与した訴訟において、本人が後から追認する場合の態様を画定した重要な判例である。答案上では、訴訟行為の追認の効力(民訴法34条2項等)が問題となる場面で、訴訟手続の安定性や信義則的側面を基礎づける論拠として活用できる。特に「一部追認の不可」は審級単位での一括性を求めるものとして位置づけられる。
事件番号: 平成2(オ)851 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一審で第三者が被告の氏名を冒用して訴訟行為をした場合でも、被告本人が自ら控訴を申し立て、その選任した訴訟代理人が異議をとどめずに本案について弁論をし、判決を受けたときは、一審での第三者の訴訟行為は追認されたものと解すべきである。
事件番号: 昭和54(オ)778 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
無権代理行為の追認には、取り消しうべき行為についての法定追認を定めた民法一二五条は類推適用されない。
事件番号: 昭和54(オ)549 / 裁判年月日: 昭和57年11月26日 / 結論: 破棄差戻
一 訴訟行為には民法八二五条は適用されない。 二 民法八二六条一項の規定による特別代理人の選任申立は、父母が共同で親権を行う場合においても、その一方が単独ですることができる。 三 民法八二六条一項の規定に基づいて選任された特別代理人が親権者のした未成年者所有不動産の担保提供行為を追認することは、その被担保債務について特…